さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
足惡き         修道院に        いつか遠く       寂しき時        
霧の中に        歸り來て        何處よりか       長雨の         
霧の雨         
 
 
 

10307
足惡き 友が必死に 彫りてゆく 胸像に午後の 陽ざし及べり
アシワルキ トモガヒッシニ ホリテユク キョウゾウニゴゴノ ヒザシオヨベリ

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10308
修道院に 入るとふ噂 聞きしまま 幾年逢はぬ 友も戀ほしも
シュウドウインニ ハイルトフウワサ キキシママ イクトシアハヌ トモモコホシモ

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10309
いつか遠く 忘れられゆく 身と思ふ 又ひとり嫁ぐ 教へ子のあり
イツカトオク ワスレラレユク ミトオモフ マタヒトリトツグ オシヘゴノアリ

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10310
寂しき時 返事めあてに 書くらしき 教へ子の手紙 憎き日もあり
サビシキトキ ヘンジメアテニ カクラシキ オシヘゴノテガミ ニクキヒモアリ

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10311
霧の中に 灯影うるめる 街に出づ 友病む暗き 家をまかりて
キリノナカニ トウエイウルメル マチニイヅ トモヤムクラキ イエヲマカリテ

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10312
歸り來て 鳳仙花の苗 植ゑに出づ 梅雨の晴れ間の 土やはらかく
カエリキテ ホウセンカノナエ ウヱニイヅ ツユノハレマノ ツチヤハラカク

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10313
何處よりか 迷ひ來し仔犬に 童らは寄る いつまでも明るき 露地の夕ぐれ
イズコヨリカ マヨヒキシコイヌニ コラハヨル イツマデモアカルキ ロジノユウグレ

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10314
長雨の 晴れ間に菊を 移植する 母の居間より 見やすき位置に
ナガアメノ ハレマニキクヲ イショクスル ハハノイマヨリ ミヤスキイチニ

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3


10315
霧の雨 降るとしもなき 夕空の 何處よりぞ栗の 花匂ひくる
キリノアメ フルトシモナキ ユウゾラノ イズコヨリゾクリノ ハナニオヒクル

『朱扇』(朱扇社 1951.7) 第3巻7号 p.3