さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
ピアノ彈きて      ピアニスト       ショパンのワルツ    そらんじて       
戀さへも        毒をのみて       訪へば         われの重荷と      
貧しければ       われにはなき      就職の         数年ぶりに       
 
 
 

10273
ピアノ彈きて 一生を清く 送らむと 少女のわれを 占めてゐし夢
ピアノヒキテ ヒトヨヲキヨク オクラムト ショウジョノワレヲ シメテヰシユメ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10274
ピアニスト たらむとしたる 日も遠く 今荒れし手を 見つつ歎かふ
ピアニスト タラムトシタル ヒモトオク イマアレシテヲ ミツツナゲカフ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10275
ショパンのワルツ 彈き終へて拍手 浴びし日よ われに今はなき 笑顔もせしや
ショパンノワルツ ヒキオヘテハクシュ アビシヒヨ ワレニイマハナキ エガオモセシヤ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10276
そらんじて ゐし花言葉 つぎつぎに 置き忘れ來し 月日と思ふ
ソランジテ ヰシハナコトバ ツギツギニ オキワスレコシ ツキヒトオモフ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10277
戀さへも 虚しとありし 遺書の言葉 友失ひて幾年 つねに思ひき
コイサヘモ ムナシトアリシ イショノコトバ トモウシナヒテイクトシ ツネニオモヒキ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10278
毒をのみて 逝きし親友の 占めし位置 隙まとなりて 今も殘れる
ドクヲノミテ ユキシシンユウノ シメシイチ スキマトナリテ イマモノコレル

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10279
訪へば 風邪の咳長く 癒えざるを みとめてくどく 気遣ふ母よ
オトナヘバ カゼノセキナガク イエザルヲ ミトメテクドクク キヅカフハハヨ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.


10280
われの重荷と なるを怖るる 母と知る 藥草も摘み ためて居給ふ
ワレノオモニト ナルヲオソルル ハハトシル ヤクソウモツミ タメテイタマフ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10281
貧しければ 母も寂しく 養老院の ことなど密かに 知り給ふらし
マズシケレバ ハハモサビシク ヨウロウインノ コトナドヒソカニ シリタマフラシ

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10282
われにはなき 彈力も持つか 働きて 學資ためむと 言ひし妹
ワレニハナキ ダンリョクモモツカ ハタラキテ ガクシタメムト イヒシイモウト

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10283
就職の 決まれることを 告げに来し 妹に毛糸 持たせつつ巻く
シュウショクノ キマレルコトヲ ツゲニコシ イモウトニケイト モタセツツマク

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3


10284
数年ぶりに 買ひし毛糸よ 夜更かして 胸の花模様 編み進めゆく
スウネンブリニ カヒシケイトヨ ヨフカシテ ムネノハナモヨウ アミススメユク

『朱扇』(朱扇社 1951.4) 第3巻4号 p.3