さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
死はすべてを      懀まれつつ       歸らざる        不和にさへ       
日記書きて       窮極は         恢復の         誤解とけぬ       
職のなき        中座して        軒に來て        
 
 
 

10250
死はすべてを 解決すると いふ語句も 思ふ時あり 不和は苦しく
シハスベテヲ カイケツスルト イフゴクモ オモフトキアリ フワハクルシク

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10251
懀まれつつ 盡くす誠も 限界に ありと思ふ今朝は 音たてて掃く
ニクマレツツ ツクスマコトモ ゲンカイニ アリトオモフケサハ オトタテテハク

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10252
歸らざる 君にいらだち 待ち居たる 心鎭めて 眠らむ今は
カエラザル キミニイラダチ マチイタル ココロシズメテ ネムラムイマハ

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10253
不和にさへ 今は慣れつつ 夜半獨り 源氏物語 讀みつぎてゆく
フワニサヘ イマハナレツツ ヨワヒトリ ゲンジモノガタリ ヨミツギテユク

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10254
日記書きて 夜更かしをれば ひそやかに 鳴き移るらし 候鳥の聲
ニッキカキテ ヨフカシヲレバ ヒソヤカニ ナキウツルラシ コウチョウノコエ

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10255
窮極は 愛のみが二人を 支ふると 信じ得る身を しあはせとせむ
キュウキョクハ アイノミガフタリヲ ササフルト シンジウルミヲ シアハセトセム

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10256
恢復の 望みも既に なき友より リルケ詩集に頬を よせて眠れる
カイフクノ ノゾミモスデニ ナキトモヨリ リルケシシュウニホホヲ ヨセテネムレル

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10257
誤解とけぬ ままに別れし 夜の街 粉雪は肩に しみて消えつつ
ゴカイトケヌ ママニワカレシ ヨルノマチ コナユキハカタニ シミテキエツツ

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10258
職のなき 妹よ隣りの 兒を招びて 子守唄など 聞かせゐるかも
ショクノナキ イモウトヨトナリノ コヲマビテ コモリウタナド キカセヰルカモ

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10259
中座して 歸る道に仰ぐ 星空よ 無視されし歎き 消ゆべくもなし
チュウザシテ カエルミチニアオグ ホシゾラヨ ムシサレシナゲキ キユベクモナシ

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3


10260
軒に來て さへづる朝の 小鳥らよ 昨日のことは 忘れむと思ふ
ノキニキテ サヘヅルアサノ コトリラヨ キノウノコトハ ワスレムトオモフ

『朱扇』(朱扇社 1951.2) 第3巻2号 p.3