さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

埼玉文学

 
勧告を         夕刊を         粗食して        独身論         
燒きてしまひき     本買へば        たんねんに       愚痴めきて       
食べてねる       無名にて        今日はひどく      菩提寺の        
涙ぐみて        脱党せし        
 
 
 

10160
勧告を 潔く受けて 辞めしとふ 友の語気のふと 淋しきはなぜ
カンコクヲ キヨクウケテ ヤメシトフ トモノゴキノフト サビシキハナゼ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.62


10161
夕刊を 買ふ列よぎり 駅に入る 今日もつひに彼に 語り得ざりし
ユウカンヲ カフレツヨギリ エキニイル キョウモツヒニカレニ カタリエザリシ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.62


10162
粗食して 月末をつなぐ 家計ゆえ 「ゴンクールの日記」 買ひかねて來つ
ソショクシテ ゲツマツヲツナグ カケイユエ ゴンクールノニッキ カヒカネテキツ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10163
独身論 ふりかざしゐし 友もいつか みどり兒の歌を 載せゐてやさし
ドクシンロン フリカザシヰシ トモモイツカ ミドリコノウタヲ ノセヰテヤサシ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10164
燒きてしまひき 「マルテの手記」を 漸くに 買ひ來て今宵 先づ夫が読む
ヤキテシマヒキ マルテノシュキヲ ヨウヤクニ カヒキテコヨイ マヅツマガヨム

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10165
本買へば 負債となりて 殘りゆく 当るあてなき くじも買ひつつ
ホンカヘバ フサイトナリテ ノコリユク アタルアテナキ クジモカヒツツ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10166
たんねんに 背広の襟を つくろひ終へて 立ちたる夜半を 少しめまひす
タンネンニ セビロノエリヲ ツクロヒオヘテ タチタルヨワヲ スコシメマヒス

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10167
愚痴めきて 來し話題そらし 脚本募集の 記事ある夕刊を 君に示しつ
グチメキテ キシワダイソラシ キャクホンボシュウノ キジアルユウカンヲ キミニシメシツ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10168
食べてねる だけの人生も 肯定すと 書きあぐみ君は 言ひて寝に立つ
タベテネル ダケノジンセイモ コウテイス カキアグミキミハ イヒテネニタツ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10169
無名にて 描き続け來し 友も遂に 個展開くと 今朝來したより
ムメイニテ カキツヅケコシ トモモツイニ コテンヒラクト ケサコシタヨリ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10170
今日はひどく 使ひすぎたる 家計簿を 記し終へて立つ既に 暗き厨に
キョウハヒドク ツカヒスギタル カケイボヲ キシオヘテタツスデニ クラキクリヤニ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10171
菩提寺の 長男が縊死 せる噂 憶測まじへて 人ら語らふ
ボダイジノ チョウナンガイシ セルウワサ オクソクマジヘテ ヒトラカタラフ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10172
涙ぐみて しまひし吾に 別れぎは とりなす言葉 君はかけにき
ナミダグミテ シマヒシワレニ ワカレギハ トリナスコトバ キミハカリニキ

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63


10173
脱党せし 人と知るゆえ 彼來れば 筆耕をおきて われも寄り聞く
ダットウセシ ヒトトシルユエ カレクレバ ヒッコウヲオキテ ワレモヨリキク

『埼玉文学』( 1950.8) 第2巻6号 p.63