さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

歌と随筆

 
門の邊の        物乏しく        山峡ひの        小夜更けて       
風の野に        小さきいがの      うす霧の        ものなべて       
いつの日に       痛みやすき       吾の生命を       
 
 
 

10086
門の邊の 大樹の合歡に 花咲きて このごろ道に 降る日もありぬ
カドノヘノ タイジュノネムニ ハナサキテ コノゴロミチニ フルヒモアリヌ

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10087
物乏しく 貧しさに時に 諍へど 相ひ寄り生きて ニとせ近し
モノトボシク マズシサニトキニ イサカヘド アヒヨリイキテ フタトセチカシ

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10088
山峡ひの 泉を引きし 裏背戸の かけひの水を 汲みて我が生く
ヤマカヒノ イズミヲヒキシ ウラセトノ カケヒノミズヲ クミテワガイク

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10089
小夜更けて 芯にひゞきくる 谷川の 音にぞ吾ら 相ひ寄られつつ
サヨフケテ シンニヒビキクル タニガワノ オトニゾワレラ アヒヨラレツツ

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10090
風の野に 微動だもせず 吹かれゐる 巖うらやむ 別れ來につつ
カゼノノニ ビドウダモセズ フカレヰル イワヲウラヤム ワカレキニツツ

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10091
小さきいがの あまたつきそめし 山栗の 大樹仰ぎて 何頼みゐる
チイサキイガノ アマタツキソメシ ヤマグリノ タイジュアオギテ ナニタノミヰル

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10092
うす霧の 夜の天体の 靜けさも 今宵乱るる 思惟に甲斐なく
ウスギリノ ヨノテンタイノ シズケサモ コヨイミダルル シイニカイナク

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10093
ものなべて 懐疑に曇る この頃を 病ひと言ひて 幾日こやりし
モノナベテ カイギニクモル コノゴロヲ ヤマヒトイヒテ イクヒコヤリシ

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10094
いつの日に 晴るゝ懐疑ぞ なす事も なくて今年の 春を逝かしむ
イツノヒニ ハルルカイギゾ ナスコトモ ナクテコトシノ ハルヲユカシム

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10095
痛みやすき 花一つ持つ 草か吾よ ふるへて夜の 野に吹かれゐる
イタミヤスキ ハナヒトツモツ クサカワレヨ フルヘテヨルノ ノニフカレヰル

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16


10096
吾の生命を 愛しむものとて 窮極は あめつちに吾の 外はなきものを
ワレノイノチヲ ヲシムモノトテ キュウキョクハ アメツチニワレノ ホカハナキモノヲ

『歌と随筆』(蒼明社 1948.9) 第3巻7号 p.16