さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

おおみや

 
花咲ける        林のなかに       水位計の        カスタネット      
美しき         川霧の         指先の         秒針が         
褐炭の         毛糸の玉は       
 
 
 

09885
花咲ける うちに知りたき 木々の名と 仰ぎつつ森の ほとりをかよふ
ハナサケル ウチニシリタキ キギノナト アオギツツモリノ ホトリヲカヨフ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09886
林のなかに しづもれる家 日曜の 今朝はたれかが ゐて釘を打つ
ハヤシノナカニ シヅモレルイエ ニチヨウノ ケサハタレカガ ヰテクギヲウツ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09887
水位計の 立つあたりまで 今日は行き 牛小屋のある ことも知りたり
スイイケイノ タツアタリマデ キョウハユキ ウシゴヤノアル コトモシリタリ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09888
カスタネット 鳴らしつつ行く 少年も 次第に溶けて 夕もやのなか
カスタネット ナラシツツユク ショウネンモ シダイニトケテ ユウモヤノナカ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09889
美しき 拘束と言へる 言葉あり 妹のルージュ 買ひゐて思ふ
ウツクシキ コウソクトイヘル コトバアリ イモウトノルージュ カヒヰテオモフ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09890
川霧の いつしか沈み 見慣れたる 灯をちりばめて 暮れてゆく街
カワギリノ イツシカシズミ ミナレタル ヒヲチリバメテ クレテユクマチ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09891
指先の 痛み忘れて 目ざめたし 明日読む本を 枕べに置く
ユビサキノ イタミワスレテ メザメタシ アスヨムホンヲ マクラベニオク

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09892
秒針が しきりにわれの 髪に触れ 廻ると思ひ つつ眠りたり
ビョウシンガ シキリニワレノ カミニフレ マワルトオモヒ ツツネムリタリ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09893
褐炭の 山のごときを 越えゆけり 身をいろどらむ 鱗も持たず
カッタンノ ヤマノゴトキヲ コエユケリ ミヲイロドラム ウロコモモタズ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43


09894
毛糸の玉は やさしく膝へ 帰りつつ 妹に編む 春のスカーフ
ケイトノタマハ ヤサシクヒザヘ カエリツツ イモウトニアム ハルノスカーフ

『おおみや』(大宮名店会 1969.2) 19号 p.43