さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

大宮文芸

 
ときじくの       どのやうに       幾人も         なかで何か       
スカートの       近づけば        園児らの        ひきだしに       
婉曲に         見しことの       
 
 
 

09845
ときじくの まなかひに降る 日照り雨 光の粒を 撒くごとく降る
トキジクノ マナカヒニフル ヒデリアメ ヒカリノツブヲ マクゴトクフル

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09846
どのやうに おろされにけむ かの大き 薬種問屋の 看板などは
ドノヤウニ オロサレニケム カノオオキ ヤクシュドンヤノ カンバンナドハ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09847
幾人も 住むかのやうに 灯をともす フランスパンを 抱き帰り来て
イクニンモ スムカノヤウニ ヒヲトモス フランスパンヲ イダキカエリキテ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09848
なかで何か 起こりゐるとも 知らぬまま 持ち歩く箱の ごとし体は
ナカデナニカ オコリヰルトモ シラヌママ モチアルクハコノ ゴトシカラダハ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09849
スカートの ひだをたたみて 寝押しすと 余念なかりし 夜毎の少女
スカートノ ヒダヲタタミテ ネオシスト ヨネンナカリシ ヨゴトノショウジョ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09850
近づけば 眼鏡光りて からしいろの 秋のスーツが よく似合ひたり
チカヅケバ メガネヒカリテ カラシイロノ アキノスーツガ ヨクニアヒタリ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09851
園児らの 三分の一ほど 残されて 踏切の手前 しばし賑はふ
エンジラノ サンブンノイチホド ノコサレテ フミキリノテマエ シバシニギハフ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09852
ひきだしに 沈めし鍵を 探しゐて 鍵のみを探し ゐるにもあらず
ヒキダシニ シズメシカギヲ サガシヰテ カギノミヲ サガシ ヰルニモアラズ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09853
婉曲に 言ひたりしかば 伝はらず 伝はらざりと ことに安らふ
エンキョクニ イヒタリシカバ ツタハラズ ツタハラザリト コトニヤスラフ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10


09854
見しことの 無しと言ひたる われのため 十指を寄せて 百合の木の花
ミシコトノ ナシトイヒタル ワレノタメ ジツシヲヨセテ ユリノキノハナ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1991.11) 19号 p.10