さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

大宮文芸

 
甲斐へ抜くる      無数の手が       何もかも        木の椅子に       
ただの岩の       扇状地         白梅の         とめどなく       
冬の陽に        山桜          
 
 
 

09835
甲斐へ抜くる 道がひとすぢ ありといふ 片栗の咲く ころには思ふ
カイヘヌクル ミチガヒトスヂ アリトイフ カタクリノサク コロニハオモフ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09836
無数の手が 今し動きて 灯をともす 刻限ならめ 暮れて来にけり
ムスウノテガ イマシウゴキテ ヒヲトモス コクゲンナラヌ クレテキニケリ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09837
何もかも 詰め込むやうに 詰め込みて 運び去られつ 落ち葉の籠は
ナニモカモ ツメコムヤウニ ツメコミテ ハコビサラレツ オチバノカゴハ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09838
木の椅子に 待たされをれば ときじくの 何か言葉の ごとき風花
キノイスニ マタサレヲレバ トキジクノ ナニカコトバノ ゴトキカザハナ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09839
ただの岩の 円錐形と 見てをれど 水を引き寄せ また引き離す
タダノイワノ エンスイケイト ミテヲレド ミズヲヒキヨセ マタヒキハナス

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09840
扇状地 といへる地形は 黒板に えがかれし図の ままに忘れず
センジョウチ トイヘルチケイハ コクバンニ エガカレシズノ ママニワスレズ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09841
白梅の はじけそめたる 寒さにて 振り返らずに 犬は行きけり
シラウメノ ハジケソメタル サムサニテ フリカエラズニ イヌハユキケリ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09842
とめどなく くらがりを飛ぶ 蝙蝠を 仰ぎて飛べぬ 蝙蝠われは
トメドナク クラガリヲトブ コウモリヲ アオギテトベヌ コウモリワレハ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09843
冬の陽に 清められたる 蓮沼の ただ黒々と 干潟なしたり
フユノヒニ キヨメラレタル ハスヌマノ タダクログロト ヒガタナシタリ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10


09844
山桜 花の散りしく 明るさに 白拍子など 出でて舞はずや
ヤマザクラ ハナノチリシク アカルサニ シラビヤウシナド イデテマハズヤ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1989.11) 17号 p.10