さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

大宮文芸

 
まどろみて       トンネルを       かつて聞き       ブラインド       
思はざる        鍵しめて        ゆるみゐる       街上に         
うす皮を        綻びを         
 
 
 

09805
まどろみて 津波の夢を 見てゐたり 湾岸道路を ゆくバスのなか
マドロミテ ツナミノユメヲ ミテヰタリ ワンガンドウロヲ ユクバスノナカ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09806
トンネルを 出でし刹那の 海の青 絵本の海の やうにひろがる
トンネルヲ イデシセツナノ ウミノアオ エホンノウミノ ヤウニヒロガル

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09807
かつて聞き 忘れてゐたる 噂なれ 翳ふかめをり 今日また聞けば
カツテキキ ワスレテヰタル ウワサナレ カゲフカメヲリ キョウマタキケバ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09808
ブラインド おろされむとし 目の前の 街路樹の幹も ずたずたになる
ブラインド オロサレムトシ メノマエノ ガイロジュノミキ ズタズタニナル

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09809
思はざる 大きさにして 鴉一羽 黒衣の使者の ごとくおりくる
オモハザル オオキサニシテ カラスイチワ コクイノシシャノ ゴトクオリクル

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09810
鍵しめて 出づる習ひの ふと寂し 通りまで人を 送らむとして
カギシメテ イヅルナラヒノ フトサビシ トオリマデヒトヲ オクラムトシテ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09811
ゆるみゐる コートのボタン そのままに 出で来て遠し バスまでの道
ユルミヰル コートノボタン ソノママニ イデキテトオシ バスマデノミチ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09812
街上に あふれてゐたる 歩行者の いづこに失せて いま星月夜
ガイジョウニ アフレテヰタル ホコウシャノ イヅコニウセテ イマホシツキヨ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09813
うす皮を 一枚一枚 剥ぎゆきて 何に到らむ われとも知れず
ウスカワヲ イチマイイチマイ ハギユキテ ナニニイタラム ワレトモシレズ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10


09814
綻びを つくろはずゐる 如き日を かさねつつ秋も ふけゆかむとす
ホコロビヲ ツクロハズヰル ゴトキヒヨ カサネツツアキモ フケユカムトス

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1985.11) 13号 p.10