さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

大宮文芸

 
行き着かぬ       槇の葉を        妻を得て        ヒロインの       
それぞれの       荷となるを       等身の         駅前の         
黄の花の        われの道        
 
 
 

09790
行き着かぬ 思ひにをれば 昼過ぎて 煙のごとき 雨の降り出づ
ユキツカヌ オモヒニヲレバ ヒルスギテ ケムリノゴトキ アメノフリイヅ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09791
槇の葉を 打つ雨だれを 見てゐしが まして乱るる 犬蓼の葉は
マキノハヲ ウツアマダレヲ ミテヰシガ マシテミダルル イヌタデノハハ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09792
妻を得て ユトレヒトに今は 住むという ユトレヒトにも 雨降るらむか
ツマヲエテ ユトレヒトニイマハ スムトイウ ユトレヒトニモ アメフルラムカ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09793
ヒロインの 異国へのがるる 場面にて 船腹を打つ 波の荒れたり
ヒロインノ イコクヘノガルル バメンニテ センプクヲウツ ナミノアレタリ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09794
それぞれの 闇をまとひて 立つ木々に まじりて立たば われは何の木
ソレゾレノ ヤミヲマトヒテ タツキギニ マジリテタタバ ワレハナンノキ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09795
荷となるを 恐れて置ける 土の鈴 ことばやさしき 人に買はれよ
ニトナルヲ オソレテオケル ツチノスズ コトバヤサシキ ヒトニカハレヨ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09796
等身の 人形の笑ひし 声かとも 驚き易く 地下街をゆく
トウシンノ ニンギョウノワラヒシ コエカトモ オドロキヤスク チカガイヲユク

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09797
駅前の 放置自転車 神々に 見放されたる 病のごとし
エキマエノ ホウチジテンシャ カミガミニ ミハナサレタル ヤマイノゴトシ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09798
黄の花の 多き季節よ 人は去り まばらに墓の 取り残されぬ
キノハナノ オオキキセツヨ ヒトハサリ マバラニハカノ トリノコサレヌ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10


09799
われの道 蝶の道目に 見えねども 古地図に江戸の 街路ととのふ
ワレノミチ チョウノミチメニ ミエネドモ コチズニエドノ ガイロトトノフ

『大宮文芸』(大宮市教育委員会 1982.11) 10号 p.10