さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

現代短歌シンボジュームテキスト

 
椿の木に        次々に         花咲ける        スパイクの       
脅えやすき       月よりも        逢はむため       やみがたく       
変生の         色盲を         幽明を         風のなき        
犠牲死を        <落ちざまに      風を得て        殺戮の         
人間に         濫伐の         たえまなく       しげりあふ       
 
 
 

09745
椿の木に 変へられてなほ 生きたきに 日々に重たし 諸手の花は
ツバキノキニ カヘラレテナホ イキタキニ ヒビニオモタシ モロテノハナハ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09746
次々に 切り倒さるる 木々の中 苦しむために 切り残されむ
ツギツギニ キリタオサルル キギノナカ クルシムタメニ キリノコサレム

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09747
花咲ける ゆゑに一本 残されて まともに風を 浴ぶる木となる
ハナサケル ユヱニヒトモト ノコサレテ マトモニカゼヲ アブルキトナル

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09748
スパイクの ままわが幹を よぢ昇る 児よ下枝を 撓めて待てば
スパイクノ ママワガミキヲ ヨヂノボル コヨシタエダヲ タワメテマテバ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09749
脅えやすき 少女のために 夜の雪墜 堪へてゐたりき 行き過ぐるまで
オビエヤスキ ショウジョノタメニ ヨノシヅレ タヘテヰタリキ ユキスグルマデ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09750
月よりも 星よりも太陽の 美しさ 生れ変りし 木にて知りゆく
ツキヨリモ ホシヨリモタイヨウノ ウツクシサ ウマレカワリシ キニテシリユク

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09751
逢はむため てだて選ばぬ 若者が わが幹に彫る 隠語めく文字
アハムタメ テダテエラバヌ ワカモノガ ワガミキニホル インゴメクモジ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09752
やみがたく 伸ばす根いつか 亡骸の 母の頭蓋を 砕く日あらむ
ヤミガタク ノバスネイツカ ボウガイノ ハハノズガイヲ クダクヒアラム

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09753
変生の 後に届きし 手紙にて 取り返しのつかぬ ことばかりなる
ヘンセイノ ノチニトドキシ テガミニテ トリカエシノツカヌ コトバカリナル

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09754
色盲を 見破られ来し 少年に 仰がれて褪せし わが花の色
シキモウヲ ミヤブラレキシ ショウネンニ アオガレテアセシ ワガハナノイロ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09755
幽明を さまよひゆけば たをやかに ありけむマルグ リータも老いぬ
ユウメイヲ サマヨヒユケバ タヲヤカニ アリケムマルグ リータモオイヌ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09756
風のなき 夜は花粉も 漂ふと 垂れつつ月に 照る葉翳る葉
カゼノナキ ヨルハカフンモ タダヨフト タレツツツキニ テルハカゲルハ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.1


09757
犠牲死を 聴きしかの日の 耳のまま 幹に貼りつき 疼く瘤あり
ギセイシヲ キキシカノヒノ ミミノママ ミキニハリツキ ウズククセアリ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2


09758
<落ちざまに水こぼしけり花椿>芭蕉を超えず木となりてなほ
オチザマニ ミズコボシケリ ハナツバキ バショウヲコエズ キトナリテナホ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2


09759
風を得て 一夜にわれの こぼす花 貧しき町の 子らが拾はむ
カゼヲエテ ヒトヨニワレノ コボスハナ マズシキマチノ コラガヒロハム

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2


09760
殺戮の 跡のごとしと 呟けり 義足にわれの 落花踏みつつ
サツリクノ アトノゴトシト ツブヤケリ ギソクノワレノ ラツカフミツツ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2


09761
人間に 戻らねば遂げ 得ぬことに 次第に醒めて ゆく心あり
ニンゲンニ モドラネバトゲ エヌコトニ シダイニサメテ ユクココロアリ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2


09762
濫伐の あとの切り株 よごれゆく 日々ひこばえに 若葉そよげり
ランバツノ アトノキリカブ ヨゴレユク ヒビヒコバエニ ワカバソヨゲリ

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2


09763
たえまなく 電話鳴る部屋 一輪の 椿を額に 挿して働く
タエマナク デンワナルヘヤ イチリンノ ツバキヲガクニ サシテハタラク

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2


09764
しげりあふ 枝葉かかげて 年を経し しびれは長く 四肢に残らむ
シゲリアフ エダハカカゲテ トシヲヘシ シビレハナガク シシニノコラム

『現代短歌シンボジュームテキスト』( 1963.4) p.2