さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

 
椿の木に        次々に         花咲ける        スパイクの       
脅えやすき       やみがたく       変生の         色盲を         
<落ちざまに      風を得て        墓の辺に        殺戮の         
埃吹く         幽明を         効用を         
 
 
 

09730
椿の木に 変へられてなほ 生きたきに 日々に重たし 諸手の花は
ツバキノキニ カヘラレテナホ イキタキニ ヒビニオモタシ モロテノハナハ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09731
次々に 切り倒さるる 木々の中 苦しむために 切り残されむ
ツギツギニ キリタオサルル キギノナカ クルシムタメニ キリノコサレム

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09732
花咲ける ゆゑに一本 残されて まともに風を 浴ぶる木となる
ハナサケル ユヱニヒトモト ノコサレテ マトモニカゼヲ アブルキトナル

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09733
スパイクの ままわが幹を よぢ昇る 児よ下枝を 撓めて待てば
スパイクノ ママワガミキヲ ヨヂノボル コヨシタエダヲ タワメテマテバ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09734
脅えやすき 少女のために 夜の雪墜 堪へてゐたりき ゆき過ぐるまで
オビエヤスキ ショウジョノタメニ ヨノシヅレ タヘテヰタリキ ユキスグルマデ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09735
やみがたく 伸ばす根いつか なきがらの 母の頭蓋を 砕く日あらむ
ヤミガタク ノバスネイツカ ナキガラノ ハハノズガイヲ クダクヒアラム

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09736
変生の 後に届きし 手紙にて 取り返しのつかぬ ことばかりなる
ヘンセイノ ノチニトドキシ テガミニテ トリカエシノツカヌ コトバカリナル

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09737
色盲を 見破られ来し 少年に 仰がれて褪せし わが花のいろ
シキモウヲ ミヤブラレキシ ショウネンニ アオガレテアセシ ワガハナノイロ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09738
<落ちざまに 水こぼしけり 花椿> 芭蕉を超えず 木となりてなほ
オチザマニ ミズコボシケリ ハナツバキ バショウヲコエズ キトナリテナホ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09739
風を得て 一夜にわれの こぼす花 貧しき町の 子らが拾はむ
カゼヲエテ ヒトヨニワレノ コボスハナ マズシキマチノ コラガヒロハム

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09740
墓の辺に 撒き散らしたる 贅のごと わが足もとの 落花にぎはふ
ハカノヘニ マキチラシタル ゼイノゴト ワガアシモトノ ラツカニギハフ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09741
殺戮の 跡のごとしと 呟けり 義足に花を 踏みしだきつつ
サツリクノ アトノゴトシト ツブヤケリ ギソクニハナヲ フミシダキツツ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09742
埃吹く 季節は長し 葉がくれに 無数の子らを はぐくむわれに
ホコリフク キセツハナガシ ハガクレニ ムスウノコラヲ ハグクムワレニ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09743
幽明を さまよひゆけば たをやかに ありけむマルグ リータも老いぬ
ユウメイヲ サマヨヒユケバ タヲヤカニ アリケムマルグ リータモオイヌ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95


09744
効用を 持ちて運ばれ ゆかむとし わが実ら黒く 籠に輝けり
コウヨウヲ モチテハコバレ ユカムトシ ワガミラクロク コニカガヤケリ

『律』(律発行所 1963.9) 3号 p.95