さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

現代短歌雁

 
こだまさへ       岩鼻を         鳴き声を        竹林の         
寄り合ひを       稲藁の         白木綿の        少年は         
木簡の         誰が星と        茫漠と         知り人の        
首寄せて        降りながら       耐へをれば       夜の底に        
 
 
 

09651
こだまさへ 還ることなき はろけさに 古墳といへど 枯れ草の丘
コダマサヘ カエルコトナキ ハロケサニ コフントイヘド カレクサノオカ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.96


09652
岩鼻を 獅子に見立てて 獅子岩と 呼ぶ伝承に 守られて来し
イワハナヲ シシニミタテテ シシイワト ヨブデンショウニ マモラレテキシ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.96


09653
鳴き声を 散らして飛ぶは 何の鳥 鴉は太き 声に物言ふ
ナキゴエヲ チラシテトブハ ナンノトリ カラスハフトキ コエニモノイフ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.96


09654
竹林の 秀をひきしぼり ひきしぼり 絞り切れざる 風のごとしも
チクリンノ ホヲヒキシボリ ヒキシボリ シボリキレザル カゼノゴトシモ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.96


09655
寄り合ひを 終へし人らか 出でて来て 背中まるめて 突風のなか
ヨリアヒヲ オヘシヒトラカ イデテキテ セナカマルメテ トップウノナカ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.96


09656
稲藁の 束は濡れゐて 目の前に 投げ出されたる 体のごとしも
イナワラノ タバハヌレヰテ メノマエニ ナゲダサレタル カラダノゴトシモ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.96


09657
白木綿の 折れてくねりて 凍りたる 滝はさだかに 流路を見しむ
シラユフノ オレテクネリテ コオリタル タキハサダカニ リュウロヲミシム

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09658
少年は 兄弟ならむ 年かさの 声が嗄れゐて バスを待ちあふ
ショウネンハ キョウダイナラム トシカサノ コエガカレヰテ バスヲマチアフ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09659
木簡の きれぎれのなか 橘といふ 文字を読み得て 香の立つごとし
モッカンノ キレギレノナカ キツトイフ モジヲヨミエテ カノタツゴトシ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09660
誰が星と 思ふならねど 夕まけて 空の巽に 光る星あり
タガホシト オモフナラネド ユウマケテ ソラノタツミニ ヒカルホシアリ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09661
茫漠と 明るかりしが 網目より ぬけ出でて月の 光となりぬ
ボウバクト アカルカリシガ アミメヨリ ヌケイデテツキノ ヒカリトナリヌ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09662
知り人の 営む宿は ひらがなの 会津八一の 書も親しけれ
シリビトノ イトナムヤドハ ヒラガナノ アイヅヤイチノ ショモシタシケレ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09663
首寄せて ありし人形の たちまちに かたき同士と なりて揉みあふ
クビヨセテ アリシクグツノ タチマチニ カタキドウシト ナリテモミアフ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09664
降りながら 溶けゐる雪の けはひして 父の忌の日も 暮れゆかむとす
フリナガラ トケヰルユキノ ケハヒシテ チチノキノヒモ クレユカムトス

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09665
耐へをれば 耐へ得るわれと 思はれて 長き月日を 交はりて来ぬ
タヘヲレバ タヘウルワレト オモハレテ ナガキツキヒヲ マジハリテキヌ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97


09666
夜の底に 芯澄みて燭の 火の燃ゆと 夢ともうつつとも なく思ひをり
ヨノソコニ シンスミテショクノ ヒノモユト ユメトモウツツトモ ナクオモヒヲリ

『現代短歌雁』(雁書館 1987.7) 3号 p.97