さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

 
悪霊を         再びの         落ち柚子の       篝り火が        
製材の         凪ぎ深き        橋桁の         木鋏を         
耳ぎはの        
 
 
 

09381
悪霊を 逐はむ願ひは われも持つ 夜々に野火焚く 村を過ぎつつ
アクリョウヲ オハムネガヒハ ワレモモツ ヨヨニノビタク ムラヲスギツツ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.47


09382
再びの 忌の夜に思ふ 病み痩せて 枇杷をむきゐし 白き指先
フタタビノ キノヨニオモフ ヤミヤセテ ビワヲムキヰシ シロキユビサキ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.47


09383
落ち柚子の 腐つ香土に 漂へば 夜の更けてまた 雨降り出でむ
オチユズノ クダツカツチニ タダヨヘバ ヨノフケテマタ アメフリイデム

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.47


09384
篝り火が 雪の飛沫を はじく音 まぼろしの城 潰えし後も
カガリビガ ユキノヒマツヲ ハジクオト マボロシノシロ ツヒエシノチモ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.47


09385
製材の 音も歯ぐきに くひこむと よりどころなく 臥す一日あり
セイザイノ オトモハグキニ クヒコムト ヨリドコロナク フスヒトヒアリ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.48


09386
凪ぎ深き 沼の曇りに 倦むごとく しきりに潜く 白鳥のかげ
ナギフカキ ヌマノクモリニ ウムゴトク シキリニカヅク ハクチョウノカゲ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.48


09387
橋桁の ほとりまで来て 消されたる 野火の跡あり 踏みつつ帰る
ハシゲタノ ホトリマデキテ ケサレタル ノビノアトアリ フミツツカエル

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.48


09388
木鋏を 鳴らして冬の 枝を断つ 芽ぐめる薔薇も 容赦なく断つ
キバサミヲ ナラシテフユノ エダヲタツ メグメルバラモ ヨウシャナクタツ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.48


09389
耳ぎはの 髪が吹かれて めざめたり そよぐ木の葉は 何方ならむ
ミミギハノ カミガフカレテ メザメタル ソヨグコノハハ イズカタナラム

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.48