さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

 
鮮血を         みなもとを       流木を         わが館         
坂道の         何の木と        さざ波の        いささかの       
涙噴く         巣を高く        一粒の         街灯の         
ばら色の        黒人の         
 
 
 

09367
鮮血を 噴くあたらしき 傷を欲り さすらひゆけば 路地深き街
センケツヲ フクアタラシキ キズヲホリ サスラヒユケバ ロジフカキマチ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.44


09368
みなもとを さして上れと いふごとき 流れに浮ぶ 形代もなし
ミナモトヲ サシテノボレト イフゴトキ ナガレニウカブ カタシロモナシ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.44


09369
流木を 寄せつつ筏 組める夢 ガンジス越えて 何処へか行く
リュウボクヲ ヨセツツイカダ クメルユメ ガンジスコエテ イヅコヘカユク

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.44


09370
わが館 めぐりてゐしが 目ざむれば 蹄の音は 遠ざかりゆく
ワガヤカタ メグリテヰシガ メザムレバ ヒヅメノオトハ トオザカリユク

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.44


09371
坂道の 反射に窓の 明るめば 間なく至らむ 夕べの冷えは
サカミチノ ハンシャニマドノ アカルメバ マナクイタラム ユウベノヒエハ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.45


09372
何の木と 知らずに過ぎし 年月か こまかき落ち葉 踏みつつ通ふ
ナニノキト シラズニスギシ トシツキカ コマカキオチバ フミツツカヨフ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.45


09373
さざ波の ごとき冬雲 引き寄せて 光る沼あり 葦原の果て
サザナミノ ゴトキフユグモ ヒキヨセテ ヒカルヌマアリ アシハラノハテ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.45


09374
いささかの 仕事を夜に もちこして 逢はずにすむと 思ふさみしさ
イササカノ シゴトヲヨルニ モチコシテ アハズニスムト オモフサミシサ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.45


09375
涙噴く ばかりに翳る 夕べあり 壁に貼りおく ルオーのピエロ
ナミダフク バカリニカゲル ユウベアリ カベニハリオク ルオーノピエロ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.45


09376
巣を高く 張り替へてゐる 蜘蛛に会ふ 漂ふごとく ありたき時に
スヲタカク ハリカヘテヰル クモニアフ タダヨフゴトク アリタキトキニ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.46


09377
一粒の 真珠貰ひて 久しきを 思ひゆくりなく 心うるほふ
ヒトツブノ シンジュモラヒテ ヒサシキヲ オモヒユクリナク ココロウルホフ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.46


09378
街灯の あかり見え来て まつはれる 落ち葉の音も われを遠退く
ガイトウノ アカリミエキテ マツハレル オチバノオトモ ワレヲトホノク

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.46


09379
ばら色の 子豚らあまた 生まれしを 告げ来る遠き 小島に住みて
バライロノ コブタラアマタ ウマレシヲ ツゲクルトオキ コジマニスミテ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.46


09380
黒人の 一団を迎へ 湧く拍手 遠き日に見し 夢のごとしも
コクジンノ イチダンヲムカヘ ワクハクシュ トオキヒニミシ ユメノゴトシモ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.46