さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

 
野火に追はれし     音立てて        結び目の        いつの日に       
とめどなく       人形の         うらがへり       象なき         
一摑みの        
 
 
 

09349
野火に追はれし たかぶりもいつか 醒めゆきて 踏みしだかれし どくだみ匂ふ
ノビニオハレシ タカブリモイツカ サメユキテ フミシダカレシ ドクダミニオフ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.40


09350
音立てて 土にくづほれ たき日なり みだらに紅葉 して立つ木あり
オトタテテ ツチニクヅホレ タキヒナリ ミダラニモミヂ シテタツキアリ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.40


09351
結び目の ゆるむ包みを 持ち直し またゆられゆく 雨夜のバスに
ムスビメノ ユルムクルミヲ モチナオシ マタユラレユク アマヨノバスニ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.40


09352
いつの日に 入れしままなる 指貫が レインコートの かくしより出づ
イツノヒニ イレシママナル ユビヌキガ レインコートノ カクシヨリイヅ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.40


09353
とめどなく 流るる涙 わが膝に まつはる犬は 耳やはらかし
トメドナク ナガルルナミダ ワガヒザニ マツハルイヌハ ミミヤハラカシ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.41


09354
人形の 髪の濡れゐる 錯覚も 過ぎてミモザの 水替へに立つ
ニンギョウノ カミノヌレヰル サッカクモ スギテミモザノ ミズカヘニタツ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.41


09355
うらがへり また裏返る 海月のむれ 藻となりてわれの 漂ひゆけば
ウラガヘリ マタウラガエル クラゲノムレ モトナリテワレノ タダヨヒユレバ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.41


09356
象なき 岩が夜毎に 現はれて 水のゆくへを 塞がむとする
カタチナキ イワガヨゴトニ アラハレテ ミズノユクヘヲ フサガムトスル

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.41


09357
一摑みの 籾あらば生命 ひらかれむ 目ざめに思ふ こともつたなし
ヒトツマミノ モミアラバイノチ ヒラカレム メザメニオモフ コトモツタナシ

『彩』(新星書房 1965.6.26) p.41