さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

叙情文芸 春季号

 
黒皮の         アスファルトの     どのやうな       山茶花の        
杉の秀を        雪雷の         天気図の        せぐくまり       
 
 
 

09292
黒皮の 手袋もいつか 身に添ふと 吊り革の右手 見をれば思ふ
クロカワノ テブクロモイツカ ミニソフト ツリカワノミギテ ミヲレバオモフ

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.22


09293
アスファルトの 路上につける 子らの鞠 音のはずむと 見て通り来ぬ
アスファルトノ ロジョウニツケル コラノマリ オトノハズムト ミテトオリコヌ

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.22


09294
どのやうな 会話のあとか 少女二人 声なく坂を くだりてゆけり
ドノヤウナ カイワノアトカ ショウジョフタリ コエナクサカヲ クダリテユケリ

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.22


09295
山茶花の 垣に沿ひ来て 山茶花の 花の匂ひに とりかこまれぬ
サザンカノ カキニソヒキテ サザンカノ ハナノニオヒニ トリカコマレヌ

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.22


09296
杉の秀を 渡る風あり 薪能を 共に見し夜も 星は冴えゐき
スギノホヲ ワタルカゼアリ タキギノウヲ トモニミシヨモ ホシハサエヰキ

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.23


09297
雪雷の ありし伝へて 能登よりの 夜の電話は 短く切れぬ
セツライノ アリシツタヘテ ノトヨリノ ヨルノデンワハ ミジカクキレヌ

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.23


09298
天気図の 等圧線を 見てゐしが 不意にわが持つ 渦とかさなる
テンキズノ トウアツセンヲ ミテヰシガ フイニワガモツ ウズトカサナル

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.23


09299
せぐくまり 反故燃しをれば 降り出でて ドラマのなかに 降る雨に似る
セグクマリ ホゴモシヲレバ フリイデテ ドラマノナカニ フルアメニニル

『叙情文芸 春季号』(叙情文芸刊行会 1983.5) p.23