さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

文芸埼玉

 
遊歩路に        失ふに         押すことも       ミシン踏めば      
肘痛む         機械音         十年目の        隣より         
発車待つ        屋上に         
 
 
 

09099
遊歩路に 灯のともる見つつ 帰りゆく たのむ思ひも かそかになりて
ユウホロニ ヒノトモルミツツ カエリユク タノムオモヒモ カソカニナリテ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09100
失ふに 惜しく残れる 何あらむ すり抜けてゆく 夜の人ごみを
ウシナフニ オシクノコレル ナニアラム スリヌケテユク ヨノヒトゴミヲ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09101
押すことも あらず押されて 歩む身を われと笑ひて 改札を出づ
オスコトモ アラズオサレテ アユムミヲ ワレトワラヒテ カイサツヲイヅ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09102
ミシン踏めば ミシンの音に 紛れゆき 憎まるるほどの 事もなし得ぬ
ミシンフメバ ミシンノオトニ マギレユキ ニクマルルホドノ コトモナシエヌ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09103
肘痛む ときに思へり スヰフトは 予言してつひに 人を死なしめき
ヒジイタム トキニオモヘリ スヰフトハ ヨゲンシテツヒニ ヒトヲシナシメキ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09104
機械音 くぐもる地下の 書庫にゐて 人のこゑより われは乱れず
キカイオン クグモルチカノ ショコニヰテ ヒトノコヱヨリ ワレハミダレズ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09105
十年目の わが犬のため 朱の色の 首輪サイズを 確かめて買ふ
ジュウネンメノ ワガイヌノタメ シュノイロノ クビワサイズヲ タシカメテカフ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09106
隣より 洩れくる議事の はげしきに 一人のこゑを 聞き分けてゐつ
トナリヨリ モレクルギジノ ハゲシキニ ヒトリノコヱヲ キキワケテヰツ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09107
発車待つ バスにゐたれば 対岸の 日あたるビルは 窓暗く見ゆ
ハッシャマツ バスニヰタレバ タイガンノ ヒアタルビルハ マドクラクミユ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91


09108
屋上に しづまりゐたる 旗一枚 不意によぢれて 降ろされゆけり
オクジョウニ シヅマリヰタル ハタイチマイ フイニヨヂレテ オロサレユケリ

『文芸埼玉』(埼玉県教育委員会 1970.11) 4号 p.91