さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌公論

 
投げだされし      さまざまに       束縛は         音のして        
アルミ箔の       逃げ水の        思ひたる        われを吊る       
かたはらに       人住まぬ        亡き人の        雨のあと        
 
 
 

09041
投げだされし 氷の塊の 裂傷に 奔りて薄き 紅色が透く
ナゲダサレシ コオリノカタマリノ レッショウニ ハシリテウスキ ベニイロガスク

『短歌公論』(短歌公論社 1972.3.1) 44号 p.2


09042
さまざまに 窺ひて人は 過ぎてゆき ゆふべゆふべの 空の茜よ
サマザマニ ウカガヒテヒトハ スギテユキ ユフベユフベノ ソノノアカネヨ

『短歌公論』(短歌公論社 1974.5.1) 70号 p.5


09043
束縛は 生くる限りと 思へるに 羊雲浮く うすく燃えつつ
ソクバクハ イクルカギリト オモヘルニ ヒツジグモウク ウスクモエツツ

『短歌公論』(短歌公論社 1974.8.1) 73号 p.1


09044
音のして 闇に目ざむる 驚きは 野に棲む兎も われもかはにぬ
オトノシテ ヤミニメザムル オドロキハ ノニスムウサギモ ワレモカハラヌ

『短歌公論』(短歌公論社 1976.1.1) 89号 p.6


09045
アルミ箔の 用途の一つ 銀いろの 鶴折りてわれの 声なく遊ぶ
アメミハクノ ヨウトノヒトツ ギンイロノ ツルオリテワレノ コエナクアソブ

『短歌公論』(短歌公論社 1977.1.1) 101号 p.


09046
逃げ水の 光のごとき 素早さに なべて過ぎつつ 春ならむとす
ニゲミズノ ヒカリノゴトキ スバヤサニ ナベテスギツツ ハルナラムトス

『短歌公論』(短歌公論社 1980.2.1) 138号 p.6


09047
思ひたる のみに罪する 掟あらば いくたびわれの 死にたるならむ
オモヒタル ノミニツミスル オキテアラバ イクタビワレハ シニタルナラム

『短歌公論』(短歌公論社 1981.6.1) 178号 p.1


09048
われを吊る 無数の糸も 光り出す 飽かず糸吐く 虫を見をれば
ワレヲツル ムスウノイトモ ヒカリダス アカズイトハク ムシヲミヲレバ

『短歌公論』(短歌公論社 1983.11.1) 183号 p.1


09049
かたはらに おく幻の 椅子一つ あくがれて待つ 夜もなし今は
カタハラニ オクマボロシノ イスヒトツ アクガレテマツ ヨモナシイマハ

『短歌公論』(短歌公論社 1984.2.1) 186号 p.2


09050
人住まぬ 家の庭にも 咲きそめて 都忘れは 雑草の丈
ヒトスマヌ イエノニワニモ サキソメテ ミヤコワスレハ ザッソウノタケ

『短歌公論』(短歌公論社 1984.6.1) 190号 p.1


09051
亡き人の たれとも知れず 夢に来て 菊人形の ごとく立ちゐる
ナキヒトノ タレトモシレズ ユメニキテ キクニンギョウノ ゴトクタチヰル

『短歌公論』(短歌公論社 1984.11.1) 195号 p.2


09052
雨のあと 必ず最後 まで残る 水たまりあるを 怖れて思ふ
アメノアト カナラズサイゴ マデノコル ミズタマリアルヲ オソレテオモフ

『短歌公論』(短歌公論社 1992.3.1) 263号 p.1