さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌新聞

 
節分草         四十年         つどひては       漠然と         
舞ひ立てば       今に残る        綿菓子を        討たれしは       
東京の         軍港の         茎細き         再発を         
わが在るを       はるばると       そのかみの       
 
 
 

08922
節分草 見ずやと招かれ 来し家は 双子の姉妹が 生まれてゐたり
セツブンソウ ミズヤトマネカレ コシイエハ フタゴノシマイガ ウマレテヰタリ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08923
四十年 離れて住みて ふるさとの 雪をんなの噂も 聞かれずなりぬ
シジュウネン ハナレテスミテ フルサトノ ユキヲンナノウワサモ キカレズナリヌ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08924
つどひては さびしき儀式 ばかりして 一生を人の 終ふるならずや
ツドヒテハ サビシキギシキ バカリシテ ヒトヨヲヒトノ オフルナラズヤ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08925
漠然と 見てゐたりしが 女童の 髪を撫でゐき 左の手にて
バクゼント ミテヰタリシガ メワラベノ カミヲナデヰキ ヒダリノテニテ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08926
舞ひ立てば 離ればなれに たんぽぽの 穂わたの一つ 一つは気球
マヒタテバ ハナレバナレニ タンポポノ ホワタノヒトツ ヒトツハキキュウ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08927
今に残る 富士見坂の名 ゆるやかに バスは車体を あらはして来ぬ
イマニノコル フジミザカノナ ユルヤカニ バスハシャタイヲ アラハシテコヌ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08928
綿菓子を 作るおもちやも 売られゐつ 初午といふ 村の祭りに
ワタガシヲ ツクルオモチヤモ ウラレヰツ ハツウマトイフ ムラノマツリニ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08929
討たれしは いかなる鬼か 鬼を討ちて 勝鬨あげし 岩が残れり
ウタレシハ イカナルオニカ オニヲウチテ カチドキアゲシ イワガノコレリ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08930
東京の 空も雪雲 北国に ゆくへの知れぬ 人ひとりあり
トウキョウノ ソラモユキグモ キチグニニ ユクヘノシレヌ ヒトヒトリアリ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08931
軍港の ウラジオストック 唱へつつ 地図に探しき 三年生は
グンコウノ ウラジオストック トナヘツツ チズニサガシキ サンネンセイハ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08932
茎細き 少女なりしが 亡き今も 髪長く結ふ 三つ編みにして
クキホソキ ショウジョナリシガ ナキイマモ カミナガクユフ ミツアミニシテ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08933
再発を 怖れつつ経し 一年に 見納めと見し 真夏の花火
サイハツヲ オソレツツヘシ イチネンニ ミオサメトミシ マナツノハナビ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08934
わが在るを 確かめて足る 夜なりや 無言電話は さびしきものを
ワガアルヲ タシカメテタル ヨルナリヤ ムゴンデンワハ サビシキモノヲ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08935
はるばると 送られて来て 香に匂ふ 越前岬の 水仙の花
ハルバルト オクラレテキテ カニニオフ エチゼンミサキノ スイセンノハナ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.


08936
そのかみの 文学少女 波の音の テープを聴きて 眠らむとする
ソノカミノ ブンガクショウジョ ナミノオトノ テープヲキキテ ネムラムトスル

『短歌新聞』(短歌新聞社 1990.3.10) p.