さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌新聞

 
気付かれぬ       最後尾の        郊外に         後部座席に       
紋服の         トンネルに       一つの傘に       地図に無き       
堤より         先回り         鳩の二十羽       音立てず        
笑ひたる        乱れしは        山鳩の         
 
 
 

08897
気付かれぬ 距離に立ちゐて 電車待つ 五分ばかりの 長かりしかな
キヅカレヌ キョリニタチヰテ デンシャマツ ゴフンバカリノ ナガカリシカナ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08898
最後尾の 車両にをれば 発車のベル 押しゐる車掌の 指の先見ゆ
サイコウビノ シャリョウニヲレバ ハッシャノベル オシヰルシャショウノ ユビノサキミユ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08899
郊外に 家の立て込む わが町を 新幹線の 窓に見て過ぐ
コウガイニ イエノタテコム ワガマチヲ シンカンセンノ マドニミテスグ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08900
後部座席に 英語の会話 続きゐて をりをり笑ふ 女性のこゑは
コウブザセキニ エイゴノカイワ ツヅキヰテ ヲリヲリワラフ ジョセイノコヱハ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08901
紋服の 男子が一人 乗りて来て 坐るまで見て 何事も無し
モンプクノ ダンシガヒトリ ノリテキテ スワルマデミテ ナニゴトモナシ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08902
トンネルに 入りて紛るる 核シェルターの ことを話して ゐたりし声も
トンネルニ イリテマギルル カクシェルターノ コトヲハナシテ ヰタリシコエモ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08903
一つの傘に よりそひゆきて みちのくの 訛りにわれも ものを言ひゐつ
ヒトツノカサニ ヨリソヒユキテ ミチノクノ ナマリニワレモ モノヲイヒヰツ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08904
地図に無き 農道にして 枯れ残る ゑのころぐさの うなづきやまず
チズニナキ ノウドウニシテ カレノコル ヱノコログサノ ウナヅキヤマズ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08905
堤より 風を呼びつつ 石を巻き また走りたり 野火の火先は
ツツミヨリ カゼヲヨビツツ イシヲマキ マタハシリタリ ノビノホサキハ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08906
先回り されゐし記憶 よみがへり 足型を砂に 沈めつつゆく
サキマワリ サレヰシキオク ヨミガヘリ アシガタヲスナニ シズメツツユク

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08907
鳩の二十羽 ほどが中空を 旋回す リモートコントロール されゐる如く
ハトノニジュウハ ホドガチュウクウヲ センカイス リモートコントロール サレヰルゴトク

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08908
音立てず 門をあけたり いつまでも ひとりのわが名 標札に見て
オトタテズ モンヲアケタリ イツマデモ ヒトリノワガナ ヒョウサツニミテ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08909
笑ひたる 顔が前列に 写りゐて 犬歯といふを 今にわが持つ
ワラヒタル カオガゼンレツニ ウツリヰテ ケンシトイフヲ イマニワガモツ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08910
乱れしは われかと思ふ コーヒーの カップがドラマの なかに割られて
ミダレシハ ワレカトオモフ コーヒーノ カップガドラマノ ナカニワラレテ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.


08911
山鳩の 声にめざめて 竪穴に 棲みゐしころと 何か変はらむ
ヤマバトノ コエニメザメテ タテアナニ スミヰシコロト ナニカカハラム

『短歌新聞』(短歌新聞社 1986.1.10) p.