さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌新聞

 
くぐり抜けて      雨となる        はろけきは       とどこほり       
人を焼く        また訪はむ       人の亡き        ひなげしは       
傘さして        はばからぬ       つぎつぎに       仕事より        
すぐ乾く        触るるもの       長びける        
 
 
 

08825
くぐり抜けて 来て並ぶ影を 踏む道と なりつつもろし 夜の会話は
クグリヌケテ キテナラブカゲヲ フムミチト ナリツツモロシ ヨルノカイワハ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08826
雨となる けはひを言ひて 身に痛く 触れしことには 答へず歩む
アメトナル ケハヒヲイヒテ ミニイタク フレシコトニハ コタヘズアユム

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08827
はろけきは 貨車のひびきか 夜をこめて 運ばれてゆく けものもあらむ
ハロケキハ カシャノヒビキカ ヨヲコメテ ハコバレテユク ケモノモアラム

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08828
とどこほり ふり返りつつ 鶏の 人のごとくに 歩むと思ふ
トドコホリ フリカエリツツ ニワトリノ ヒトノゴトクニ アユムトオモフ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08829
人を焼く 炉のとどろきの 残りゐて 鋪道を歩む 靴もひびかぬ
ヒトヲヤク ロノトドロキノ ノコリヰテ ホドウヲアユム クツモヒビカヌ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08830
また訪はむ 日のいつ知れず 去りゆくに 縞なして流るる 若葉木原は
マタトハム ヒノイツシレズ サリユクニ シマナシテナガルル ワカバキハラハ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08831
人の亡き あとのさびしさ 過ぎてゆく 日の数などに 意味を持たせて
ヒトノナキ アトノサビシサ ズキテユク ヒノカズナドニ イミヲモタセテ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08832
ひなげしは 白のみとなり トレーシング ペーパーほどの 薄き花びら
ヒナゲシハ シロノミトナリ トレーシング ペーパーホドノ ウスキハナビラ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08833
傘さして 帰りゆきたり 甲虫の 体温のことを 言ひゐし児らも
カササシテ カエリユキタリ コウチュウノ タイオンノコトヲ イヒヰシコラモ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08834
はばからぬ 声に家族の なじり合ふ 会話続けり 雨夜のバスに
ハバカラヌ コエニカゾクノ ナジリアフ カイワツヅケリ アメヨノバスニ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08835
つぎつぎに 鶴も死ぬとぞ 脱ぎ捨てし 手袋が持つ 十方の闇
ツギツギニ ツルガシヌトゾ ヌギステシ テブクロガモツ シッポウノヤミ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08836
仕事より 解かれぬわれか 黄のカード 飛び交ふ夢を 夜もすがら見て
シゴトヨリ トカレヌワレカ キノカード トビカフユメヲ ヨモスガラミテ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08837
すぐ乾く ブラウスと知る やさしさに 泡だてて揉む 胸の部分を
スグカワク ブラウストシル ヤサシサニ アワダテテモム ムネノブブンヲ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08838
触るるもの みなつめたきに 紫陽花の 花咲くあたり 日の差してゐる
フルルモノ ミナツメタキニ アジサイノ ハナサクアタリ ヒノサシテヰル

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1


08839
長びける 会議のさなか 夏雲を 追はむに狭し オフィスの窓は
ナガビケル カイギノサナカ ナツグモヲ オハムニセマシ オフィスノマドハ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1974.8) p.1