さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌新聞

 
手袋に         道幅を         花火のごとき      つぶやきの       
亡き父の        何事か         焼き場など       目薬を         
サブリナの       花のあと        杭抜きし        混信し         
身を防ぐ        錫いろに        珈琲も         
 
 
 

08800
手袋に 十指収めて 帰らむに チユールに透けて 光るマニキユア
テブクロニ トユビオサメテ カエラムニ チユールニスケテ ヒカルマニキユア

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08801
道幅を 覆ひてビルの 影深し 全きわれの 歩むにあらず
ミチハバヲ オオヒテビルノ カゲフカシ マッタキワレノ アユムニアラズ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08802
花火のごとき アガパンサスも 過ぎむとし おもたき雨の 日もすがら降る
ハナビノゴトキ アガパンサスモ スギムトシ オモタキアメノ ヒモスガラフル

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08803
つぶやきの ふとよみがへり ピタゴラスの 定理といふを 今に記憶す
ツブヤキノ フトヨミガヘリ ピタゴラスノ テイリトイフヲ イマニキオクス

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08804
亡き父の 象牙の骰子を つね持ちて 惑ひ絶ゆると いふこともなし
ナキチチノ ゾウゲノサイコロヲ ツネモチテ マドヒタユルト イフコトモナシ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08805
何事か ありて駆けゆく 犬に会ひ 道はふたたび ひるがほの坂
ナニゴトカ アリテカケユク イヌニアヒ ミチハフタタビ ヒルガホノサカ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08806
焼き場など あると聞かねど 野の果てを 吹きちぎられて 煙飛ぶ見ゆ
ヤキバナド アルトキカネド ノノハテヲ フキチギラレテ ケムリトブミユ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08807
目薬を さしてしばらく 眼閉づ まぼろしばかり 見つつ過ぎむか
メグスリヲ サシテシバラク マナコトヅ マボロシバカリ ミツツスギムカ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08808
サブリナの 靴履くことも なく置きて をりをりさびし 妹の唄
サブリナノ クツハクコトモ ナクオキテ ヲリヲリサビシ イモウトノウタ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08809
花のあと しげみ深めて 柘植のあり 賑はふことも なき門先に
ハナノアト シゲミフカメテ ツゲノアリ ニギハフコトモ ナキカドサキニ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08810
杭抜きし 跡のくぼみの くれぐれに 光りつつ水の たまれるも知る
クイヌキシ アトノクボミノ クレグレニ ヒカリツツミズノ タマレルモシル

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08811
混信し 切れたる電話 思はざる 呪縛となりて 暑き日のくれ
コンシンシ キレタルデンワ オモハザル ジュバクトナリテ アツキヒノクレ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08812
身を防ぐ 偽りのみは 許されよ 岬のかげと なりゆく港
ミヲフセグ イツワリノミハ ユルサレヨ ミサキノカゲト ナリユクミナト

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08813
錫いろに くれゆく空を 遠ざかり 生きて還らむ 鳩と思はず
スズイロニ クレユクソラヲ トオザカリ イキテカエラム ハトトオモハズ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.


08814
珈琲も 断ちて癒えゆく 日を待つに 不意のごとくに 咲く合歓の花
コーヒーモ タチテイエユク ヒヲマツニ フイノゴトクニ サクネムノハナ

『短歌新聞』(短歌新聞社 1969.8) p.