さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

歌壇

 
竹似草         廃線の         散らばれる       発掘の         
稲藁を         こだまにも       梅園を         堪へ切れず       
雪どけに        県境の         瓶の形を        日だまりの       
種を採る        学用品の        犬を曳く        膝つきて        
 
 
 

08711
竹似草 刈られて広き 川堤 胸のあばらも 透くごとき日よ
タケニグサ カラレテヒロキ カワヅツミ ムネノアバラモ スクゴトキヒヨ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.105


08712
廃線の レールのほとり 散りそむる あり咲き出づる ありて白梅
ハイセンノ レールノホトリ チリソムル アリサキイヅル アリテシラウメ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.105


08713
散らばれる 親馬仔馬 子供らの ゑがく仔馬は いたく小さし
チラバレル オヤウマコウマ コドモラノ ヱガクコウマハ イタクチイサシ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.105


08714
発掘の あとをそのまま 霜枯れて 風に打たるる 目じるしの旗
ハックツノ アトヲソノママ シモカレテ カゼニウタルル メジルシノハタ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.105


08715
稲藁を 焚きゐる塚は ひとしきり のろしの如き 煙あげたり
イナワラヲ タキヰルツカハ ヒトシキリ ノロシノゴトキ ケムリアゲタリ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.105


08716
こだまにも 遅速のありて はるかなる 雑木の山も 芽ぐまむころか
コダマニモ チソクノアリテ ハルカナル ゾウキノヤマモ メグマムコロカ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.106


08717
梅園を くぐりて来れば 絵馬堂の 絵馬は木の音 立てて吹かるる
バイエンヲ クグリテクレバ エマドウノ エマハキノオト タテテフカルル

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.106


08718
堪へ切れず 垂るると如く 中天を 撓めてゆけり 航跡雲は
タヘキレズ タルルトゴトク チュウテンヲ タワメテユケリ コウセキウンハ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.106


08719
雪どけに 濁れるを見て 去らむとす 澄みゆくまでの 時間も知らず
ユキドケニ ニゴレルヲミテ サラムトス スミユクマデノ ジカンモシラズ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.106


08720
県境の 村はたちまち 暮れゆきて 夜に見る梅は つぶつぶの白
ケンキョウノ ムラハタチマチ クレユキテ ヨニミルウメハ ツブツブノシロ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.106


08721
瓶の形を そのまま包める 持ちものを 横にして膝に 置ける少女は
ビンノカタチヲ ソノママクルメル モチモノヲ ヨコニシテヒザニ オケルショウジョハ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.106


08722
日だまりの 斑雪を掻きて ゐたりしが 首たてて鳴く 牝鶏一羽
ヒダマリノ ハダレヲカキテ ヰタリシガ クビタテテナク ヒンケイイチワ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.107


08723
種を採る 菜のみひと畝 残されて 匂ふばかりの 黒土となる
タネヲトル ナノミヒトウネ ノコサレテ ニオフバカリノ クロツチトナル

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.107


08724
学用品の 広告が今朝も 配られぬ 太郎も次郎も あらぬわが家に
ガクヨウヒンノ コウコクガケサモ クバラレヌ タロウモジロウモ アラヌワガヤニ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.107


08725
犬を曳く 少年が行き 夕刊の 薄きが届き 冬の日暮れぬ
イヌヲヒク ショウネンガユキ ユウカンノ ウスキガトドキ フユノヒクレヌ

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.107


08726
膝つきて ボタンつけをれば いつの日の 夕べにか似て 雨の音する
ヒザツキテ ボタンツケヲレバ イツノヒノ ユウベニカニテ アメノオトスル

『歌壇』(本阿弥書店 1988.5) 第2巻5号 p.107