さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌現代

 
うす紙を        まじなひを       つばくろの       角砂糖を        
竹籠の         オルゴールを      をりをりに       ひとりゐは       
紋織りの        今もなほ        値の高き        ずたずたに       
吹きしまく       どのやうに       手すさびに       行きどまりの      
硝煙の         むじな偏の       大いなる        透かし見て       
山ありて        幾たびも        バスを待つ       落とし来し       
バス停の        
 
 
 

08662
うす紙を はさみて椀を 積みをれば 禁忌事項の 数あるごとし
ウスガミヲ ハサミテワンヲ ツミヲレバ キンキジコウノ カズアルゴトシ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.12


08663
まじなひを してより下駄を おろす習ひ ふるさとの村に 今も残るや
マジナヒヲ シテヨリゲタヲ オロスナラヒ フルサトノムラニ イマモノコルヤ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.12


08664
つばくろの 低く飛ぶ日は 雨と言ひ 母もさびしく 留守を守りけむ
ツバクロノ ヒククトブヒハ アメトイヒ ハハモサビシク ルスヲモリケム

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.12


08665
角砂糖を 詰めむとするに かどばりて 空間寒し ガラスの壺は
カクザトウヲ ツメムトスルニ カドバリテ クウカンサムシ ガラスノツボハ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.12


08666
竹籠の 網のまばらを はみ出でて 生椎茸は きのこの匂ひ
タケカゴノ アミノマバラヲ ハミイデテ ナマシイタケハ キノコノニオヒ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.13


08667
オルゴールを 閉づれば戻る しじまあり よはひは既に 乱を好まず
オルゴールヲ トヅレバモドル シジマアリ ヨバヒハスデニ ランヲコノマズ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.13


08668
をりをりに 行くわが意識 冷蔵庫に 大きザボンを 一つ持てれば
ヲリヲリニ ユクワガイシキ レイゾウコニ オオキザボンヲ ヒトツモテレバ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.13


08669
ひとりゐは めぐり冷えゐる 日の多し 絵巻の雲の 不意にひろがる
ヒトリヰハ メグリヒエヰル ヒノオオシ エマキノクモノ フイニヒロガル

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.13


08670
紋織りの 薔薇の模様は かすかなる 翳なして白の テーブルクロス
モンオリノ バラノモヨウハ カスカナル カゲナシテシロノ テーブルクロス

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.13


08671
今もなほ 俗名に呼びて 語り合ふ 逝きて六年 たちたる人を
イマモナホ ゾクミョウニヨビテ カタリアフ ユキテロクネン タチタルヒトヲ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.13


08672
値の高き 古書の噂を して行けり 人それぞれの よろこびを持つ
ネノタカキ コショノウワサヲ シテユケリ ヒトソレゾレノ ヨロコビヲモツ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.13


08673
ずたずたに なる思ひせり 天幕の 切れめに風の ふためく見れば
ズタズタニ ナルオモヒセリ テンマクノ キレメニカゼノ フタメクミレバ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.14


08674
吹きしまく 砂塵にまなこ 閉ぢをれば めくれてしまふ 野原一枚
フキシマク サジンニマナコ トヂヲレバ メクレテシマフ ノハライチマイ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.14


08675
どのやうに 立つ牛ならむ 立つことを 忘れしごとく にれかみやまず
ドノヤウニ タツウシナラム タツコトヲ ワスレシゴトク ニレカミヤマズ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.14


08676
手すさびに 拾ひたれども 石は石の 重さに土の 匂ひをまとふ
テスサビニ ヒロヒタレドモ イシハイシノ オモサニツチノ ニオヒヲマトフ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.14


08677
行きどまりの 垣にからみて 鉄線の 大き紫 かがよひゐたり
ユキドマリノ カキニカラミテ テツセンノ オオキムラサキ カガヨヒヰタリ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.14


08678
硝煙の 臭ひといふを 手花火に 嗅ぎつつ子らは 怖れを知らず
ショウエンノ ニオヒトイフヲ テバナビニ カギツツコラハ オソレヲシラズ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.14


08679
むじな偏の 貌といふ字を 書きをれば 人間といふ 不可解のもの
ムジナヘンノ カオトイフジヲ カキヲレバ ニンゲントイフ フカカイノモノ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.14


08680
大いなる スパナの形と 気づきたり 何を恐れて 見し夢ならむ
オオイナル スパナノカタチト キヅキタリ ナニヲオソレテ ミシユメナラム

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.15


08681
透かし見て 手漉きの紙を 買ひたれば まだらを胸に いだく心地す
スカシミテ テスキノカミヲ カヒタレバ マダラヲムネニ イダクココチス

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.15


08682
山ありて 谷ありて人は 生くるとふ いま目の前は 桜のふぶき
ヤマアリテ タニアリテヒトハ イクルトフ イマメノマエハ サクラノフブキ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.15


08683
幾たびも かけかへられし 大橋に 人柱とふ 言葉も古りぬ
イクタビモ カケカヘラレシ オオハシニ ヒトバシラトフ コトバモフリヌ

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.15


08684
バスを待つ 列に喪服の 人のをり 糸引きて雨は 菜の花に降る
バスヲマツ レツニモフクノ ヒトノヲリ イトヒキテアメハ ナノハナニフル

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.15


08685
落とし来し ライター思へば 窓口に 孔雀羊歯の鉢も 目によみがへる
オトシコシ ライターオモヘバ マドグチニ クジャクシダノハチモ メニヨミガヘル

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.15


08686
バス停の 標識が白く 点るころ ラマ僧二人 いづこへ帰る
バステイノ ヒョウシキガシロク トモルコロ ラマソウフタリ イヅコヘカエル

『短歌現代』(短歌新聞社 1987.8) 第11巻8号 p.15