さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌現代

 
はだしにて       お百度を        巻きものを       くらがりに       
結論的に        握りゐる        ゆるやかに       駅のあたり       
目じるしの       並びたる        近づけば        てのひらに       
スカートの       人間を         ミッションの      徴発に         
夜半に発ちて      婉曲に         二人だけの       乳母車に        
底深く         幼子の         共に行きて       養蜂の         
過ぎにしや       
 
 
 

08637
はだしにて 追ふこともわれは せざりしと ドラマの沙漠 見をれば思ふ
ハダシニテ オフコトモワレハ セザリシト ドラマノサバク ミヲレバオモフ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.12


08638
お百度を 踏みて回ると いふ石の 大きくて定かな 形をなさず
オヒャクドヲ フミテマワルト イフイシノ オオキクテサダカナ カタチヲナサズ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.12


08639
巻きものを 巻き終はりたる 指先に 視線あつめて 尼僧はをりぬ
マキモノヲ マキオハリタル ユビサキニ シセンアツメテ ニソウハヲリヌ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.12


08640
くらがりに 拡大されて 一本の 糸ももつれず 烏瓜咲く
クラガリニ カクダイサレテ イッポンノ イトモモツレズ カラスウリサク

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.12


08641
結論的に 思ひたること われひとり 動かずにさへ をれば見られず
ケツロンテキニ オモヒタルコト ワレヒトリ ウゴカズニサヘ ヲレバミラレズ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.13


08642
握りゐる 木の実の一個 あたためて どんぐりをわれは 何に孵さむ
ニギリヰル キノミノイッコ アタタメテ ドングリヲワレハ ナニニカヘサム

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.13


08643
ゆるやかに 坂になりゐる バス通り バスをよけむと 身をよぢりたり
ユルヤカニ サカニナリヰル バスドオリ バスヲヨケムト ミヲヨヂリタリ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.13


08644
駅のあたり 目に見えて高層と なるばかり 衛星都市と いはるる町は
エキノアタリ メニミエテコウソウト ナルバカリ エイセイトシト イハルルマチハ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.13


08645
目じるしの 橋はプレート のみとなり 列なして車が 流れてゐたり
メジルシノ ハシハプレート ノミトナリ レツナシテクルマガ ナガレテヰタリ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.13


08646
並びたる ダンプカーの若き 横顔は そのまま青の 信号となる
ナラビタル ダンプカーノワカキ ヨコガオハ ソノママアオノ シンゴウトナル

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.13


08647
近づけば 眼鏡光りて からしいろの 秋のスーツが よく似合ひたり
チカヅケバ メガネヒカリテ カラシイロノ アキノスーツガ ヨクニアヒタリ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.13


08648
てのひらに 何の疲れか 残りをり 軍服のいろの 夢より覚めて
テノヒラニ ナンノツカレカ ノコリヲリ グンプクノイロノ ユメヨリサメテ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.14


08649
スカートの ひだをたたみて 寝押しすと 余念なかりし 夜毎の少女
スカートノ ヒダヲタタミテ ネオシスト ヨネンナカリシ ヨゴトノショウジョ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.14


08650
人間を やめたいと言ひて きかざるを もて余しつつ 一夜ありにき
ニンゲンヲ ヤメタイトイヒテ キカザルヲ モテアマシツツ ヒトヨアリニキ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.14


08651
ミッションの 女学校が遠く 見えゐしが 霧深からむ 盆地の町は
ミッションノ ジョガッコウガトオク ミエヰシガ キリフカカラム ボンチノマチハ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.14


08652
徴発に 馬もとられて ふるさとに 闇深かりし 曲がり家思ふ
チョウハツニ ウマモトラレテ フルサトニ ヤミフカカリシ マガリヤオモフ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.14


08653
夜半に発ちて 帰らぬ友軍 ありしとぞ 終戦近き 半島にして
ヨワニタチテ カエラヌユウグン アリシトゾ シュウセンチカキ ハントウニシテ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.14


08654
婉曲に 言ひたりしかば 伝はらず 伝はらざりし ことに安らふ
エンキョクニ イヒタリシカバ ツタハラズ ツタハラザリシ コトニヤスラフ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.14


08655
二人だけの 言葉をピアノと 交はすやうに 調律師はをり 二時間ほどを
フタリダケノ コトバヲピアノト カハスヤウニ チョウリツシハヲリ ニジカンホドヲ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.15


08656
乳母車に みどりごは居ず みどりごを 抜きたる跡の ふつくら窪む
ウバグルマニ ミドリゴハイズ ミドリゴヲ ヌキタルアトノ フツクラクボム

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.15


08657
底深く 蛇行してゐる 川と会ふ つね水ばかり 見つつ渡るに
ソコフカク ダコウシテヰル カワニアフ ツネミズバカリ ミツツワタルニ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.15


08658
幼子の 睦めるさまに 追ふごとく 追はるるごとく 家鴨の四、五羽
オサナゴノ ムツメルサマニ オフゴトク オハルルゴトク イエカモノシ、ゴワ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.15


08659
共に行きて 袖をよごしし 山百合の 花粉の痕は 今に残れる
トモニユキテ ソデヲヨゴシシ ヤマユリノ カフンノアトハ イマニノコレル

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.15


08660
養蜂の 旅をいつより やめにけむ 幼子を曳きて スーパーにゐる
ヨウホウノ タビヲイツシカ ヤメニケム オサナゴヲヒキテ スーパーニヰル

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.15


08661
過ぎにしや こののちなりや 断崖に 立つ日のありと いふ占ひは
スギニシヤ コノノチナリヤ ダンガイニ タツヒノアリト イフウラナヒハ

『短歌現代』(短歌新聞社 1991.1) 第15巻1号 p.15