さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
その道を        日を選ぶ        大時計は        かそかなる       
十人の         ぎざぎざの       仮面つけて       煮立ちたる       
仙台の         三たび来て       たれかれの       内臓を         
中型の         釘の長さに       
 
 
 

08457
その道を まつすぐと電話に 告げてより ぐんぐん近づく 白の車体は
ソノミチヲ マツスグトデンワニ ツゲテヨリ グングンチカヅク シロノシャタイハ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.70


08458
日を選ぶ 習ひのわれに 残りゐて 古き傘のまま マートまで行く
ヒヲエラブ ナラヒノワレニ ノコリヰテ フルキカサノママ マートマデユク

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.70


08459
大時計は いづこも正午を さすならむ 人まばらなる 広場もあらむ
オオドケイハ イヅコモショウゴヲ サスナラム ヒトマバラナル ヒロバモアラム

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71


08460
かそかなる 収入のありて 片栗の 花をゑがかむ 絵の具買ふとぞ
カソカナル ミイリノアリテ カタクリノ ハナヲヱガカム エノグカフトゾ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71


08461
十人の 子供預かり 賑はへり 間口の狭き ビルの二階は
ジュウニンノ コドモアズカリ ニギハヘリ マグチノセマキ ビルノニカイハ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71


08462
ぎざぎざの 紙の王冠 かぶりたる 小さき王さま たちまちころぶ
ギザギザノ カミノオウカン カブリタル チイサキオウサマ タチマチコロブ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.71


08463
仮面つけて 鬼になりし子 鬼のまま 帰りてはならず 祖母待つ家へ
カメンツケ オニニナリシコ オニノママ カエリテハナラズ ソボマツイエヘ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72


08464
煮立ちたる 湯沸かしポットの カルキ抜く ボタンを押して 待つに間のあり
ニタチタル ユワカシポットノ カルキヌク ボタンヲオシテ マツニマノアリ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72


08465
仙台の 駄菓子いただく ティータイム 時計まはりに 箱を回しぬ
センダイノ ダガシイタダク ティータイム トケイマハリニ ハコヲマワシヌ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72


08466
三たび来て また迷へるに 理容室の サインポールが 不意に目の前
ミタビキテ マタマヨヘルニ リヨウシツノ サインポールガ フイニメノマエ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.72


08467
たれかれの 手を借りて昇る 階段に あたたかき手と 今宵も言はる
タレカレノ テヲカリテノボル カイダンニ アタタカキテト コヨイモイハル

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73


08468
内臓を 病むことのなき 軽さよと アンティークドール 棚に戻しぬ
ナイゾウヲ ヤムコトノナキ カルサヨト アンティークドール タナニモドシヌ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73


08469
中型の 犬張子もて 遊びしは 幾百年も 昔のごとし
チュウガタノ イヌハリコモテ アソビシハ イクヒャクネンモ ムカシノゴトシ

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73


08470
釘の長さに 区分されたる 釘箱の いつよりかあり いつまでかある
クギノナガサニ クワケサレタル クギバコノ イツヨリカアリ イツマデカアル

『短歌』(角川書店 1993.2) 第40巻2号 p.73