さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
セロファンの      ときじくの       ディオールか      丈高く         
右の手の        かすかなる       紋章の         単純な         
痛きところの      白き布を        どのやうな       山深く         
ねんごろの       シャガールの      
 
 
 

08422
セロファンの 音がどうしても 立つゆゑに そのままいだく 薔薇の花束
セロファンノ オトガドウシテモ タツユヱニ ソノママイダク バラノハナタバ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.18


08423
ときじくの まなかひに降る 日照り雨 光の粒を 撒くごとく降る
トキジクノ マナカヒニフル ヒデリアメ ヒカリノツブヲ マクゴトクフル

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.18


08424
ディオールか ミツコか知れず 差しかけて 呉れゐし傘を のがれ来つれば
ディオールカ ミツコカシレズ サシカケテ クレヰシカサヲ ノガレキツレバ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.19


08425
丈高く ポインセチアは ありにしを 声もあげずに 枯れてしまひぬ
タケタカク ポインセチアハ アリニシヲ コエモアゲズニ カレテシマヒヌ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.19


08426
右の手の ぬくもる如し 牛乳の 昔の瓶を 思ひてをれば
ミギノテノ ヌクモルゴトシ ギュウニュウノ ムカシノビンヲ オモヒテヲレバ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.19


08427
かすかなる 地震のありて 起きゐるは 隣の犬と われのみになる
カスカナル ジシンノアリテ オキヰルハ トナリノイヌト ワレノミトナル

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.19


08428
紋章の いはれなどどうでも 今はよく 枯れ葉垂りゐる 祖父の桐の木
モンショウノ イハレナドドウデモ イマハヨク カレハタリヰル ソフノキリノキ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.20


08429
単純な 形のわが家 われを入れ 埴輪の家の ごとくしづもる
タンジュンナ カタチノワガヤ ワレヲイレ ハニワノイエノ ゴトクシヅモル

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.20


08430
痛きところの 無き日は点字を 打つといふ 祈りにあらむ 点字を打つは
イタキトコロノ ナキヒハテンジヲ ウツトイフ イノリニアラム テンジヲウツハ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.20


08431
白き布を のべたるごとき 蕎麦の花 ふるふると動く 近くに見れば
シロキフヲ ノベタルゴトキ ソバノハナ フルフルトウゴク チカクニミレバ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.20


08432
どのやうな なりゆきに大人 七人の 家族住みゐて ひつそりとせり
ドノヤウナ ナリユキニオトナ シチニンノ カゾクスミヰテ ヒツソリトセリ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.21


08433
山深く 入れば呼びたく なるといふ われならばたれの 名を呼ぶならむ
ヤマフカク イレバヨビタク ナルトイフ ワレナラバタレノ ナヲヨブナラム

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.21


08434
ねんごろの 見舞ひなりしが 去りぎはに 人のいのちを 測る目をせり
ネンゴロノ ミマヒナリシガ サリギハニ ヒトノイノチヲ ハカルメヲセリ

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.21


08435
シャガールの リトグラフには 花が咲き 馬がゐて鳥がゐて 人もゐたりす
シャガールノ リトグラフニハ ハナガサキ ウマガヰテトリガヰテ ヒトモヰタリス

『短歌』(角川書店 1991.2) 第38巻2号 p.21