さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
竜胆の         過ぎてゆく       色の無き        遠くまで        
雪の日の        壁の絵の        棒立ちに        ランタンを       
真人間         鯉口を         かなしみて       帰りゆく        
裏側は         在り馴れし       
 
 
 

08338
竜胆の 花活けをれば 先の世も 後の世もひとり 棲むかと思ふ
リンドウノ ハナイケヲレバ サキノヨモ ノチノヨモヒトリ スムカトオモフ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.20


08339
過ぎてゆく 足音ばかり 音たてて 氷を踏むは 下校の子らか
スギテユク アシオトバカリ オトタテテ コオリヲフムハ ゲコウノコラカ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.20


08340
色の無き 葡萄摘みゐる 夢なりき 色無き房の 手に重かりき
イロノナキ ブドウツミヰル ユメナリキ イロナキフサノ テニオモカリキ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.21


08341
遠くまで ものの見ゆる日 見えざる日 視界くらめて 今朝は雪降る
トオクマデ モノノミユルヒ ミエザルヒ シカイクラメテ ケサハユキフル

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.21


08342
雪の日の 逆光のなか おのづから 胸に手を当つ マリアの像は
ユキノヒノ ギャッコウノナカ オノヅカラ ムネニテヲアツ マリアノゾウハ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.21


08343
壁の絵の 思はぬ隅に 眼あり 見られてあらむ 幾つもの目に
カベノエノ オモハヌスミニ マナコアリ ミラレテアラム イクツモノメニ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.21


08344
棒立ちに なりし白馬を 描きたり 馬の恐怖の よみがへるまで
ボウダチニ ナリシハクバヲ エガキタリ ウマノキョウフノ ヨミガヘルマデ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.22


08345
ランタンを 突き出して何を 見たりしや 絵のなかの女は ただにみひらく
ランタンヲ ツキダシテナニヲ ミタリシヤ エノナカノオンナハ タダニミヒラク

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.22


08346
真人間 といふ言葉不意に 湧きて出づ 自画像に光る 眼見をれば
マニンゲン トイフコトバフイニ ワキテイヅ ジガゾウニヒカル マナコミヲレバ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.22


08347
鯉口を 切られし如く 目の前の 窓といふ窓は 黒く塗られつ
コイグチヲ キラレシゴトク メノマエノ マドトイフマドハ クロクヌラレツ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.22


08348
かなしみて 人は過ぎゆき 足もとに 描かれし赤き 花のみそよぐ
カナシミテ ヒトハスギユキ アシモトニ カカレシアカキ ハナノミソヨグ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.23


08349
帰りゆく 一人となりて 立つバスに たれかかすかに ポプリ匂はす
カエリユク ヒトリトナリテ タツバスニ タレカカスカニ ポプリニオハス

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.23


08350
裏側は のつぺらぼうか 薬局の 朝鮮人参 古びて白し
ウラガワハ ノツペラボウカ ヤッキョクノ チョウセンニンジン フルビテシロシ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.23


08351
在り馴れし ひとりの夕餉 卓上の 塩と胡椒を かそかに振りて
アリナレシ ヒトリノユウゲ タクジョウノ シオトコショウヲ カソカニフリテ

『短歌』(角川書店 1985.2) 第32巻2号 p.23