さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
白百合の        靴音を         ひたすらに       子らのため       
梵鐘は         めくるめく       家づとに        染められて       
曼珠沙華に       十年に         死のときは       安否さへ        
金輪際         何を待ちて       
 
 
 

08310
白百合の 絵にまだ青き つぼみ見ゆ つぼみも咲きて 花終へにけむ
シラユリノ エニマダアオキ ツボミミユ ツボミモサキテ ハナオヘニケム

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.20


08311
靴音を 待ちて更かしし 夜々ありき 待ち飽かざりき 若かりしかば
クツオトヲ マチテフカシシ ヨヨアリキ マチアカザリキ ワカカリシカバ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.20


08312
ひたすらに 釘打つさまの 見えながら かかはりのなき ことを思へる
ヒタスラニ クギウツサマノ ミエナガラ カカハリノナキ コトヲオモヘル

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.21


08313
子らのため 故郷を捨てし 父母ならむ 磐梯の山を 見つつ思へば
コラノタメ コキョウヲステシ フボナラム バンダイノヤマヲ ミツツオモヘバ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.21


08314
梵鐘は ただにしづもり ゐたりしが 中世の冬の ごとき日ざしよ
ボンショウハ タダニシヅモリ ヰタリシガ チュウセイノフユノ ゴトキヒザシヨ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.21


08315
めくるめく 速さに回る 風車 四つの角の たちまち見えず
メクルメク ハヤサニマワル カザグルマ ヨッツノツノノ タチマチミエズ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.21


08316
家づとに 絵蠟燭買ひ バス待てば 何かかなしみを 持ちたるごとし
イエヅトニ エロウソクカヒ バスマテバ ナニカカナシミヲ モチタルゴトシ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.22


08317
染められて 織られてつやを 持つタフタ かすかに繭の 匂ひ残れる
ソメラレテ オラレテツヤヲ モツタフタ カスカニマユノ ニオヒノコレル

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.22


08318
曼珠沙華に ふちどられたる 田なりしが 田も稗抜きて ゐし祖父もなし
マンジュシャゲニ フチドラレタル タナリシガ タモヒエヌキテ ヰシソフモナシ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.22


08319
十年に どのあたりまで 往きにけむ 数珠の水晶は 曇り帯び来ぬ
ジュウネンニ ドノアタリマデ ユキニケム ジュズノスイショウハ クモリオビコヌ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.22


08320
死のときは たれもひとりよ まひまひは 一粒のまま 日の暮れむとす
シノトキハ タレモヒトリヨ マヒマヒハ ヒトツブノママ ヒノクレムトス

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.23


08321
安否さへ 問ふよしもなき 人ながら 苦しみのみを 負ふにもあらぬ
アンピサヘ トフヨシモナキ ヒトナガラ クルシミノミヲ オフニモアラヌ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.23


08322
金輪際 かかる願ひは 告げ得ぬに 思ひゐて血の 濃くなるごとし
コンリンザイ カカルネガヒハ ツゲエヌニ オモヒヰテチノ コクナルゴトシ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.23


08323
何を待ちて ゐるわれならむ 地球儀は ひと回りして また海の青
ナニヲマチテ ヰルワレナラム チキュウギハ ヒトマワリシテ マタウミノアオ

『短歌』(角川書店 1983.2) 第30巻2号 p.23