さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
すきとほる       敵無くて        屋上に         シャッターの      
責められて       なしがたき       知らぬまに       わが顔も        
人数の         力学の         なさざりし       起き出でて       
けはいなく       仏頭の         水のほとりに      救はれし        
堪へがたき       石などを        寝返ると        方角の         
一本の         
 
 
 

08091
すきとほる ガラス見をれば 裏と表に 分れしのちの 遠き月日よ
スキトホル ガラスミヲレバ ウラトオモテニ ワカレシノチノ トオキツキヒヨ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.98


08092
敵無くて 味方のあらむ 筈なけれ 再びかかる きれぎれの虹
テキナクテ ミカタノアラム ハズナケレ フタタビカカル キレギレノニジ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.98


08093
屋上に のぼりて何を なす人か 三人をれば 心騒がず
オクジョウニ ノボリテナニヲ ナスヒトカ サンニンヲレバ ココロサワガズ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.98


08094
シャッターの あがる前より われの目に さだかに見えて ゐたる壺あり
シャッターノ アガルマエヨリ ワレノメニ サダカニミエテ ヰタルツボアリ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.99


08095
責められて 正すべき身に 何あらむ 首の無い絵に 人の集まる
セメラレテ タダスベキミニ ナニアラム クビノナイエニ ヒトノアツマル

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.99


08096
なしがたき 旅を思へば ゆるやかに くだる煉瓦の 道など見え来
ナシガタキ タビヲオモヘバ ユルヤカニ クダルレンガノ ミチナドミエク

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.99


08097
知らぬまに 免れ得たる 罪あらむ 棄つべき子さへ 持たざりしかば
シラヌマニ マヌガレエタル ツミアラム スツベキコサヘ モタザリシカバ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.99


08098
わが顔も 仮面の一つ 能面の 部屋を思へば うす明りせる
ワガカオモ カメンノヒトツ ノウメンノ ヘヤヲオモヘバ ウスアカリセル

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.99


08099
人数の 減りて夜勤に 入らむとし 書庫の暗さの 気になりはじむ
ニンズウノ ヘリテヤキンニ イラムトシ ショコノクラサノ キニナリハジム

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.99


08100
力学の 当然として 倒れたる 書架といへども また引き起こす
リキガクノ トウゼントシテ タオレタル ショカトイヘドモ マタヒキオコス

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.100


08101
なさざりし 見ざりし咎は 深からむ なしたる罪の 多く問はるる
ナサザリシ ミザリシトガハ フカカラム ナシタルツミノ オオクトハルル

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.100


08102
起き出でて 一時間がほどの たゆたひに ゆだぬることも 休みの日ゆゑ
オキイデテ イチジカンガホドノ タユタヒニ ユダヌルコトモ ヤスミノヒユヱ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.100


08103
けはいなく 咲く水中花 着色の 黄いろのままの はなびらを解く
ケハイナク サクスイチュウカ チャクショクノ キイロノママノ ハナビラヲトク

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.100


08104
仏頭の 眉さながらに 描きつつ 内なる修羅の うとましき日よ
ブットウノ マユサナガラニ エガキツツ ウチナルシュラノ ウトマシキヒヨ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.100


08105
水のほとりに 出づる理由など 明かされて 狐火もいつか 見られずなりぬ
ミズノホトリニ イヅルワケナド アカサレテ キツネビモイツカ ミラレズナリヌ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.100


08106
救はれし ことを負ひめに ながらへて 瀬音は耳を 離れずといふ
スクハレシ コトヲオヒメニ ナガラヘテ セオトハミミヲ ハナレズトイフ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.101


08107
堪へがたき 思ひなりしが 手袋を はめて凶器を 持つにもあらず
タヘガタキ オモヒナリシガ テブクロヲ ハメテキョウキヲ モツニモアラズ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.101


08108
石などを 落とすごとくに 思ひきり 突き落としたき 願ひと言はむ
イシナドヲ オトスゴトクニ オモヒキリ ツキオトシタキ ネガヒトイハム

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.101


08109
寝返ると いふことのあり 寝返らば 別の世界の 見え来るらむか
ネガエルト イフコトノアリ ネガエラバ ベツノセカイノ ミエクルラムカ

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.101


08110
方角の なき闇のなか 昼間見し 白梅ならむ 花明りする
ホウカクノ ナキヤミノナカ ヒルマミシ ハクバイナラム ハナアカリスル

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.101


08111
一本の 木となりてあれ ゆさぶりて 過ぎにしものを 風と呼ぶべく
イッポンノ キトナリテアレ ユサブリテ スギニシモノヲ カゼトヨブベク

『短歌』(角川書店 1979.5) 第26巻5号 p.101