さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
ガラス戸の       一人一人の       海の近き        一面の         
スフィンクスも     水を差す        暮れて来し       巻き尺の        
理由など        喪の服を        人さらひの       帰りたる        
ふるさとは       突き刺さる       かき立てて       逆説と         
半ばにて        地下深く        告げ得ざる       
 
 
 

07941
ガラス戸の 外は夕映え さかさまに とまれる鳥の ふと安定す
ガラスドノ ソトハユウバエ サカサマニ トマレルトリノ フトアンテイス

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07942
一人一人の 児の挙ぐる声 かたまりて こだまして騒音と なるまでの距離
ヒトリヒトリノ コノアグルコエ カタマリテ コダマシテソウオント ナルマデノキョリ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07943
海の近き 町ゆゑ雲の 美しき 空ならむビルの 上にひらけて
ウミノチカキ マチユヱクモノ ウツクシキ ソラナラムビルノ ウエニヒラケテ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07944
一面の 穂すすきのなか 身をくらます よろこびあらむ 子らの声する
イチメンノ ホススキノナカ ミヲクラマス ヨロコビアラム コラノコエスル

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07945
スフィンクスも 見てゐむ雲と 思ふまで 砂丘の上の 空の明るさ
スフィンクスモ ミテヰムクモト オモフマデ サキュウノウエノ ソラノアカルサ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07946
水を差す といふことのあり 幼な子の 持つ風車 回りはじめぬ
ミズヲサス トイフコトノアリ オサナゴノ モツカザグルマ マワリハジメヌ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07947
暮れて来し 海の上なる 空は今 ステンドグラスの 青の色なす
クレテキシ ウミノウエナル ソラハイマ ステンドグラスノ アオノイロナス

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07948
巻き尺の 尾を胸に垂りて 出でて来つ いとけなき日に 見たりし少女
マキジャクノ オヲムネニタリテ イデテキツ イトケナキヒニ ミタリシショウジョ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07949
理由など どのやうにもつくと 思へるに つたなきことを 人の言ひたり
リユウナド ドノヤウニモツクト オモヘルニ ツタナキコトヲ ヒトノイヒタリ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.90


07950
喪の服を 雨に濡らして 帰り来ぬ 水を吸ひたる 絹のおもたさ
モノフクヲ アメニヌラシテ カエリコヌ ミズヲスヒタル キヌノオモタサ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07951
人さらひの 妖婆などにならむ 年齢を 思へりマリオ ネットを見つつ
ヒトサラヒノ ヨウバナドニナラム ネンレイヲ オモヘリマリオ ネットヲミツツ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07952
帰りたる 合図に鳴らす クラクション どの家と知らず 夜毎に聞きて
カエリタル アイズニナラス クラクション ドノイエトシラズ ヨゴトニキキテ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07953
ふるさとは 山深き町 諭されて 一匙の塩も 大切にしき
フルサトハ ヤマフカキマチ サトサレテ ヒトサジノシオモ タイセツニシキ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07954
突き刺さる 言葉なりしが 鳥か魚の 言ひたることと なして忘れむ
ツキササル コトバナリシガ トリカウオノ イヒタルコトト ナシテワスレム

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07955
かき立てて 日々いそしめば 幕開きを 待つ久しさに 家の建ちゆく
カキタテテ ヒビイソシメバ マクアキヲ マツヒサシサニ イエノタチユク

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07956
逆説と とられしのみに 帰り来ぬ 平易に言ふを 人は好まず
ギャクセツト トラレシノミニ カエリコヌ ヘイイニイフヲ ヒトハコノマズ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07957
半ばにて 必ず醒めて どの木にも 登り詰めしと いふことあらず
ナカバニテ カナラズサメテ ドノキニモ ノボリツメシト イフコトアラズ

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07958
地下深く 何祝ぎごとの あらむ日か 花サフランの 湧き出でて咲く
チカフカク ナニホギゴトノ アラムヒカ ハナサフランノ ワキイデテサク

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91


07959
告げ得ざる ことの証しに ただ白く 月のかたちを 塗り残したる
ツゲエザル コトノアカシニ タダシロク ツキノカタチヲ ヌリノコシタル

『短歌』(角川書店 1978.1) 第25巻1号 p.91