さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
携ひて         痣として        われの死を       口が裂けても      
階段を         接ぎ穂なき       ひとすぢの       夜のわれを       
泡だてて        
 
 
 

07771
携ひて 在りにし日まで 幾億光年の 昔まで遠く 引き戻されよ
タヅサヒテ アリニシヒマデ イクオクコウネンノ ムカシマデトオク ヒキモドサレヨ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.88


07772
痣として 顔に残ると 思ふまで あかずなげきて 幾月かたつ
アザトシテ カオニノコルト オモフマデ アカズナゲキテ イクツキカタツ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.88


07773
われの死を 見ずにすみたる 妹と 繰り返し思ひ なぐさまむとす
ワレノシヲ ミズニスミタル イモウトト クリカエシオモヒ ナグサマムトス

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.88


07774
口が裂けても 言へぬことあり 思ひゐて 髪のなかから 汗ばみて来ぬ
クチガサケテモ イヘヌコトアリ オモヒヰテ カミノナカカラ アセバミテキヌ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89


07775
階段を 昇り来りて みづからの 足音のふと さもしき日なり
カイダンヲ ノボリキタリテ ミヅカラノ アシオトノフト サモシキヒナリ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89


07776
接ぎ穂なき 思ひにをれば ゆるやかに 輪を描きてあがる 跳ね橋が見ゆ
ツギホナキ オモヒニヲレバ ユルヤカニ ワヲカキテアガル ハネハシガミユ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89


07777
ひとすぢの 曲線となる 目の前に はげしくぶれて ゐたるコードは
ヒトスヂノ キョクセントナル メノマエニ ハゲシクブレテ ヰタルコードハ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89


07778
夜のわれを かこむ死者たち 声たてず 本のうしろの やうな背中よ
ヨノワレヲ カコムシシャタチ コエタテズ ホンノウシロノ ヤウナセナカヨ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89


07779
泡だてて 手を洗ふなり 死者たちの 夢ばかり見て 眠らむ夜も
アワダテテ テヲアラフナリ シシャタチノ ユメバカリミテ ネムラムヨルモ

『短歌』(角川書店 1973.1) 第20巻1号 p.89