さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
内法を         すり替へて       鷺草の         敗訴と         
措葉色に        奪魂の         ワイパーは       発言を         
如何ならむ       かたまりにくき     まどろみの       遠き町の        
一夏に         気折れせし       遺されし        反応を         
マヨネーズ       呼び捨てに       這いあがり       草むらに        
蝕甚の         自在なる        野の起伏        流木は         
温覚を         拝物の         遠き日の        月桂樹の        
換算し         フレームを       
 
 
 

07553
内法を 少し撓めて 聴きゐたる 言葉あり日を 経つつ重たし
ウチノリヲ スコシタワメテ キキヰタル コトバアリヒヲ ヘツツオモタシ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.18


07554
すり替へて 思ふならねど 枯れつくし 襤褸溜めたる ごとき蓮田
スリカヘテ オモフナラネド カレツクシ ランルタメタル ゴトキハチスダ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.18


07555
鷺草の 花に残れる 水明り ダムサイトはくらき 灯を集めゐて
サギサウノ ハナニノコレル ミズアカリ ダムサイトハクラキ ヒヲアツメヰテ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.18


07556
敗訴と なりし経緯も 聴きて来て 見知らぬ祖父の 墓標が寒し
ハイソト ナリシケイイモ キキテキテ ミシラヌソフノ ボヒョウガサムシ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.18


07557
措葉色に 森は暮れつつ 沼尻に 水のこだまの 光るをりふし
オシバイロニ モリハクレツツ ヌマジリニ ミズノコダマノ ヒカルヲリフシ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.18


07558
奪魂の 術などもわれは 持ちたきに 影近寄せて 街灯ともる
ダツコンノ スベナドモワレハ モチタキニ カゲチカヨセテ ガイトウトモル

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.18


07559
ワイパーは 硝子擦りゐて おもむろに 見え来るわれの 入り込まむ隙
ワイパーハ ガラススリヰテ オモムロニ ミエクルワレノ イリコマムスキ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.19


07560
発言を 封ぜむために 示されし 数値にてあざやかな 負号伴ふ
ハツゲンヲ フウゼムタメニ シメサレシ スウチニテアザヤカナ フゴウトモナフ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.19


07561
如何ならむ 薬種か入れし わが夜々の 語彙溜めて古代 西域の壺
イカナラム ヤクシュカイリシ ワガヨヨノ ゴイタメテコダイ セイイキノツボ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.19


07562
かたまりにくき ジエリーを水に 冷やしゐて 形づくられ ゆく恐怖あり
カタマリニクキ ジエリーヲミズニ ヒヤシヰテ カタチヅクラレ ユクキョウフアリ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.19


07563
まどろみの 間無数に 生えゐたる 触手うつつの われは持ち得ず
マドロミノ アイダムスウニ ハエヰタル ショクシュウツツノ ワレハモチエズ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.19


07564
遠き町の 便りに聴けば 騙られて ゐるとふわが名 美しからむ
トオキマチノ タヨリニキケバ カタラレテ ヰルトフワガナ ウツクシカラム

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.19


07565
一夏に 荒らせし庭と めぐりつつ 野芥子の穂わた 吹けば飛びかふ
ヒトナツニ アラセシニワト メグリツツ ノゲシノホワタ フケバトビカフ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号(通巻84号) p.19


07566
気折れせし 夜々に思へば 念力の ごときを持ちて 生終へし母
キオレセシ ヨヨニオモヘバ ネンリキノ ゴトキヲモチテ ショウオヘシハハ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.19


07567
遺されし 香嚢の香の うすれゆき 如何に漂ふ 未来を思ふ
ノコサレシ コウノウノカノ ウスレユキ イカニタダヨフ ミライヲオモフ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07568
反応を 示すことなく 聴き終へて 立場互角と なりし時の間
ハンノウヲ シメスコトナク キキオヘテ タチバゴカクト ナリシトキノマ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07569
マヨネーズ 搾り出しゐて 寂しきに 展性のごときを みづからは持つ
マヨネーズ シボリダシヰテ サビシキニ テンセイノゴトキヲ ミヅカラハモツ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07570
呼び捨てに わが名言ひゐつと 聴きしのみ 帰り来て若布の 砂落としゐる
ヨビステニ ワガナイヰツト キキシノミ カエリキテワカメノ スナオトシヰル

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07571
這いあがり 来しわれを突き 落とせしも われにて夢の 醒めぎはの声
ハイアガリ コシワレヲツキ オトセシモ ワレニテユメノ サメギハノコエ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07572
草むらに サンダルの片方 探しつつ 探さむものは まだほかにある
クサムラニ サンダルノカタホウ サガシツツ サガサムモノハ マダホカニアル

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07573
蝕甚の まま昇り来む 月待てば わがなす故意の なべて危ふし
ショクジンノ ママノボリコム ツキマテバ ワガナスコイノ ナベイアヤフシ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07574
自在なる さまに伸びゐて 百日紅の 古りし木が持つ 花咲かぬ枝
ジザイナル サマニノビヰテ サルスベリノ フリシキガモツ ハナサカヌエダ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21


07575
野の起伏 川の名なども はるけきに 燦爛と過ぎし 一夏ありき
ノノキフク カワノナナドモ ハルケキニ サンラントスギシ ヒトナツアリキ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21


07576
流木は 端より水に 漬かりゆき 仮泊の船の 灯の色乱る
リュウボクハ ハジヨリミズニ ツカリユキ カハクノフメノ ヒノイロミダル

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21


07577
温覚を 失ひゆくと 思ふまで 待ちて如何なる 夜の海を見む
オンカクヲ ウシナヒユクト オモフマデ マチテイカナル ヨノウミヲミム

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21


07578
拝物の 徒ともなり得ぬ いらだちに 木の芯を持てる 護符贈りにき
ハイブツノ トトモナリエヌ イラダチニ キノシンヲモテル ゴフオクリニキ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21


07579
遠き日の 打ち身のあとの 疼くごと 抜かれし陰画の ゆくへも寂し
トオキヒノ ウチミノアトノ ウヅクゴト ヌカレシネガノ ユクヘモサビシ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21


07580
月桂樹の 葉を入れてシチユー 煮込むとも 償ひがたき 訃を知りしあと
ローリエノ ハヲイレテシチユー ニコムトモ ツグナヒガタキ フヲシリシアト

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21


07581
換算し 合へる会話を うとみつつ 心富めりと いふにもあらず
カンサンシ アヘルカイワヲ ウトミツツ ココロトメリト イフニモアラズ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.20


07582
フレームを 造る計画 持ちあへば 来たらむ冬に 幸待つごとし
フレームヲ ツクルケイカク モチアヘバ キタラムフユニ サチマツゴトシ

『短歌』(角川書店 1960.12) 第7巻12号 p.21