さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
砂地にて        夕潮の         昏れぐれの       いくたびも       
海なかの        おのづから       朝霧の         遠山の         
草萌えの        みづからに       いらだてる       校正に         
同意語の        いくたびか       身に課する       夜をこめて       
草蔽ふ         石蕗の葉むら      夜の水に        たはやすく       
 
 
 

07468
砂地にて 不意にとぎるる 軌條見き 何をつながむ われの歩みぞ
スナチニテ フイニトギルル キジョウミキ ナニヲツナガム ワレノアユミゾ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07469
夕潮の 滿ちてしずけき 潟あらむ 姿見のなか すでに人ゐず
ユウシオノ ミチテシズケキ カタアラム スガタミノナカ スデニヒトヰズ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07470
昏れぐれの 渚に鴎 とびかへば 模糊として夢の 醒めぎはに似つ
クレグレノ ナギサニカモメ トビカヘバ モコトシテユメノ サメギハニニツ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07471
いくたびも 月さす海を 見に立てど 騎馬の音など する筈のなし
イクタビモ ツキサスウミヲ ミニタテド キバノオトナド スルハズモナシ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07472
海なかの 浮標の位置も 知らずして ひそかに遷す わが夜の椅子
ワタナカノ ウヒョウノイチモ シラズシテ ヒソカニウツス ワガヨルノイス

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07473
おのづから 草ある方へ 移ろふと 繪のなかの羊の 群を追ひゆく
オノヅカラ クサアルホウヘウツロフト エノナカノヒツジノ ムレヲオヒユク

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07474
朝霧の 未だなづさふ 木の間より 見え來て兒らの あそべる日向
アサギリノ イマダナヅサフ コノマヨリ ミエキテコラノ アソベルヒナタ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07475
遠山の イワザクラここの 河原に ひらく經緯も われは知りたき
トホヤマノ イワザクラココノ カワハラニ ヒラクケイイモ ワレハシリタキ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.128


07476
草萌えの 牧場のかなた 茫洋を 限りて白き 棚をめぐらす
クサモエノ マキバノカナタ ボウヨウヲ カギリテシロキ タナヲメグラス

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07477
みづからに 正すいかなる 符牒あらむ 赤きインクを ペンにみたして
ミヅカラニ タダスイカナル フチョウアラム アカキインクヲ ペンニミタシテ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07478
いらだてる こころ見抜かれ ゐしわれか ひとりとなりて 眼帯はづす
イラダテル ココロミヌカレ ヰシワレカ ヒトリトナリテ ガンタイハヅス

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07479
校正に 倦みて思へば 石工は 石に漬ゆる 夢なども見む
コウセイニ ウミテオモヘバ セッコウハ イシニツヒユル ユメナドモミム

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07480
同意語の 幾つを紙に 書き並めて 何目論むと いふにもあらず
ドウイゴノ イクツヲカミニ カキナメテ ナニモクロムト イフニモアラズ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07481
いくたびか 雲のかげゆく 水の上 常春藤はあをき 花もちて垂る
イクタビカ クモノカゲユク ミズノウエ キヅタハアヲキ ハナモチテタル

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07482
身に課する 禁句の幾つ 事務服を 脱ぐ夕べにて かなしみ深し
ミニカスル キンクノイクツ ジムフクヲ ヌグユウベニテ カナシミフカシ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07483
夜をこめて 抗へばかく 波だちて 凍らぬ沼と 今朝は思ひつ
ヨヲコメテ アラガヘバカク ナミダチテ コオラヌヌマト ケサハオモヒツ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07484
草蔽ふ 水路ひとすぢ 風葬の 丘とつたふる 薹地をめぐる
クサオオフ スイロヒトスヂ フウソウノ オカトツタフル ダイチヲメグル

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07485
石蕗の葉むら 光れる夜の 道狭め あやしみ合ひて すれ違ひたり
ツハノハムラ ヒカレルヨルノ ミチセバメ アヤシミアヒテ スレチガヒタリ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07486
夜の水に ひびきて稲架の 撓ふ音 しづかにわれを 取り戻しゆく
ヨノミズニ ヒビキテハサノ シナフオト シヅカニワレヲ トリモドシユク

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129


07487
たはやすく 凪がむこころと 思はねど 歸り來てエリカの 花匂ふ部屋
タハヤスク ナガムココロト オモハネド カエリキテエリカノ ハナニオフヘヤ

『短歌』(角川書店 1958.3) 第5巻3号(通巻51号) p.129