さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

形成

 
二枚の刃を       進みぐせの       見つからぬ       夢のなかの       
春分の         われの身に       ラ・パロマの      針柚子を        
谷深く         どのやうに       襟もとの        さわだてる       
考へても        さし潮の        
 
 
 

06266
二枚の刃を かさねておけば しづかなる かたちと思ふ 机上の鋏
ニマイノハヲ カサネテオケバ シヅカナル カタチトオモフ キジョウノハサミ

『形成』(形成発行所 1974.5) 第22巻5号(通巻253号) p.3


06267
進みぐせの 柱時計と 知りながら おどろきやすし 休みの日にも
ススミグセノ ハシラドケイト シリナガラ オドロキヤスシ ヤスミノヒニモ

『形成』(形成発行所 1974.5) 第22巻5号(通巻253号) p.3


06268
見つからぬ ままにすぎつつ 妹の よく嵌めゐたる 珊瑚の耳環
ミツカラヌ ママニスギツツ イモウトノ ヨクハメヰタル サンゴノミミワ

『形成』(形成発行所 1974.5) 第22巻5号(通巻253号) p.3


06269
夢のなかの 約束のごと はかなきに 詣でむトルコ 桔梗を買ひて
ユメノナカノ ヤクソクノゴト ハカナキニ モウデムトルコ キキョウヲカヒテ

『形成』(形成発行所 1974.5) 第22巻5号(通巻253号) p.3


06270
春分の 日ざしとなりて わがゆくて 紫いろに 砂利の浮きたつ
シュンブンノ ヒザシトナリテ ワガユクテ ムラサキイロニ ジャリノウキタツ

『形成』(形成発行所 1974.5) 第22巻5号(通巻253号) p.3


06271
われの身に 香の匂ひの するといふ 噎せてひさしく 香を焚かぬに
ワレノミニ カウノニオヒノ スルトイフ ムセテヒサシク カウヲタカヌニ

『形成』(形成発行所 1974.5) 第22巻5号(通巻253号) p.3


06272
ラ・パロマの 目覚し時計 また買はむ やさしくなさむ 朝の思ひを
ラ・パロマノ メザマシドケイ マタカハム ヤサシクナサム アサノオモヒヲ

『形成』(形成発行所 1974.5) 第22巻5号(通巻253号) p.4


06273
針柚子を 椀に浮かして なす夕餉 何を食べても ひもじきわれか
ハリユズヲ ワンニウカシテ ナスユウゲ ナニヲタベテモ ヒモジキワレカ

『形成』(形成発行所 1974.7) 第22巻7号(通巻255号) p.31


06274
谷深く たづさひ降りし 日のありき 栃の実を机の 上にころがす
タニフカク タヅサヒオリシ ヒノアリキ トチノミヲツクエノ ウエニコロガス

『形成』(形成発行所 1974.7) 第22巻7号(通巻255号) p.31


06275
どのやうに 角度変へても われのゐて 鏡に映る 範囲灰いろ
ドノヤウニ カクドカヘテモ ワレノヰテ カガミニウツル ハンイハイイロ

『形成』(形成発行所 1974.7) 第22巻7号(通巻255号) p.31


06276
襟もとの さびしき朝か 鏡のなかの われにかけやる 銀の鎖を
エリモトノ サビシキアサカ カガミノナカノ ワレニカケヤル ギンノクサリヲ

『形成』(形成発行所 1974.7) 第22巻7号(通巻255号) p.31


06277
さわだてる 木立の上を 流れつつ 粗き縞なす 何の煙か
サワダテル コダチノウエヲ ナガレツツ アラキシマナス ナンノケムリカ

『形成』(形成発行所 1974.7) 第22巻7号(通巻255号) p.31


06278
考へても どうにもならず 道ばたの 菜の花は半ば 実となりてゐる
カンガヘテモ ドウニモナラズ ミチバタノ ナノハナハナカバ ミトナリテヰル

『形成』(形成発行所 1974.7) 第22巻7号(通巻255号) p.31


06279
さし潮の 色となり来る 見つつゐて 河の向うは わが知らぬ街
サシシオノ イロトナリクル ミツツヰテ カワノムコウハ ワガシラヌマチ

『形成』(形成発行所 1974.7) 第22巻7号(通巻255号) p.31