さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

形成

 
噂撒きて        事務服の        昨日の続きの      掃きゆきて       
釣合ひの        田舎に居らば      すきとほる       停年近き        
残雪の         白樺の         
 
 
 

05283
噂撒きて ゐることむしろ たのしげに 友はするすると 林檎をむけり
ウワサマキテ ヰルコトムシロ タノシゲニ トモハスルスルト リンゴヲムケリ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05284
事務服の ままぬけて来て バスに乗る 聞かれたくなき 電話かくるため
スモツクノ ママヌケテキテ バスニノル キカレタクナキ デンワカクルタメ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05285
昨日の続きの 複写とりつつ 午後となれば 青く染まりし 中指痛む
キノウノツヅキノ コピートリツツ ゴゴトナレバ アオクソマリシ ナカユビイタム

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05286
掃きゆきて 卓袱台を たてかけながら 久しくあけぬ 襖と思ふ
ハキユキテ チャブダイヲ タテカケナガラ ヒサシクアケヌ フスマトオモフ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05287
釣合ひの とれぬ思ひの まま眠る 贈られし版画 壁に吊して
ツリアヒノ トレヌオモヒノ ママネムル オクラレシハンガ カベニツルシテ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05288
田舎に居らば 不幸にならずに すみしかと 返らぬことを また母の言ふ
イナカニオラバ フコウニナラズニ スミシカト カエラヌコトヲ マタハハノイフ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05289
すきとほる まで熟れし茱萸 失ひし いつかの万年筆の 軸の色なり
スキトホル マデウレシグミ ウシナヒシ イツカノペンノ ジクノイロナリ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05290
停年近き 君が絵を習ひ 始めたり ポンカンを描くと 聞けばゑましき
テイネンチカキ キミガエヲナラヒ ハジメタリ ポンカンヲエガクト キケバヱマシキ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05291
残雪の ひらたく占むる 窪地あり 去年のすすきの うち伏す中に
ザンセツノ ヒラタクシムル クボチアリ コゾノススキノ ウチフスナカニ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.56


05292
白樺の 映れる湖面 乱しつつ 光る日照雨の たちまちに過ぐ
シラカバノ ウツレルコメン ミダシツツ ヒカルソバエノ タチマチニスグ

『形成』(形成発行所 1956.7) 第4巻7号(通巻39号) p.57