さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

形成

 
返信を         碓氷越えて       這い松の        夢に見しは       
風つのる        何に執して       昏れてゆく       まざまざと       
永劫の         荻叢に         山上の         山原の         
たどきなく       女の智慧の       君の小説には      
 
 
 

05221
返信を 強ひ来し手紙も 溜めしまま 旅ゆかむ願ひ のみつのりゆく
ヘンシンヲ シヒコシテガミモ タメシママ タビユカムネガヒ ノミツノリユク

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05222
碓氷越えて またも旅ゆく われのこと 伝はりゆきて君に 如何に響くぞ
ウスヒコエテ マタモタビユク ワレノコト ツタハリユキテキミニ イカニヒビクゾ

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05223
這い松の 青むのみなる 火口原 またひとしきり 砂塵はしまく
ハイマツノ アオムノミナル カコウゲン マタヒトシキリ サジンハシマク

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05224
夢に見しは 無風の曠野ぞ 火山礫を 吹き飛ばし来る 風にたじろぐ
ユメニミシハ ムフウノコウヤゾ カザンレキヲ フキトバシクル カゼニタジログ

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05225
風つのる 火山灰地の ただなかに また人を降し バスは去りゆく
カゼツノル カザンバイチノ タダナカニ マタヒトヲオロシ バスハサリユク

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05226
何に執して 苦しめる身ぞ 岩漿は たたなはり劫初の 地形をとどむ
ナンニシュウシテ クルシメルミゾ ガンショウハ タタナハリゴウショノ チケイヲトドム

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05227
昏れてゆく 岩場にひとり バス待てば 虜囚の思ひ 身にきざし来る
クレテユク イワバニヒトリ バスマテバ リョシュウノオモヒ ミニキザシクル

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05228
まざまざと 硫黄匂へば 目を閉ぢて 火口丘をくだる バスにゆらるる
マザマザト イオウニオヘバ メヲトヂテ カコウキュウヲクダル バスニユラルル

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05229
永劫の 荒蕪と思ふ 野を過ぎて 穂すすきそよぐ 一地帯あり
エイゴウノ コウブトオモフ ノヲスギテ ホススキソヨグ イチチタイアリ

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05230
荻叢に 野川あふるる ひとところ 何ぞ踏み越え がたき思ひは
ヲギムラニ ノガワアフルル ヒトトコロ ナニゾフミコエ ガタキオモヒハ

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05231
山上の 驟雨に撃たれ 来しこころ 何か見失はむ 危惧に眠れず
ヤマガミノ シュウウニウタレ コシココロ ナニカミウシナハム キグニネムレズ

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05232
山原の 不毛を見尽くし 来て幾日 遠く光りゐたる 湖を恋ふ
ヤマハラノ フモウヲミツクシ キテイクヒ トオクヒカリヰタル ミズウミヲコフ

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05233
たどきなく 耳を澄ませば 身もだえて 落葉を急ぐ 樹々と思ほゆ
タドキナク ミミヲスマセバ ミモダエテ ラクエフヲイソグ キギトオモホユ

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05234
女の智慧の 足らはざりしを 悔みたる 日々もやうやく 闌けし思ひす
オンナノチエノ タラハザリシヲ クヤミタル ヒビモヤウヤク タケシオモヒス

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6


05235
君の小説には 描き得ざらむ わが焦土 いつよりか泉 湧く苑を秘む
キミノショウセツニハ エガキエザラム ワガショウド イツヨリカイズミ ワクソノヲヒム

『形成』(形成発行所 1956.2) 第4巻2号(通巻34号) p.6