さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

形成

 
酔へば寂しがりやに   二年経て        共に死なむと      死ぬ時は        
ドラマの中の      ひとたびは       妻とふ名に       いつまでも       
一枚の         さまざまの       忽ちに         蚊遣りの匂ひ      
いつとなく       
 
 
 

05198
酔へば寂しがりやに なる夫なりき 偽名して かけ来し電話 切れど危ふし
ヨヘバサビシガリヤニ ナルツマナリキ ギメイシテ カケコシデンワ キレドアヤフシ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05199
二年経て 机の位置も書棚も そのままなるを 不思議のごとく 夫は眺むる
ニネンヘテ ツクエノイチモショダナモ ソノママナルヲ フシギノゴトク ツマハナガムル

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05200
共に死なむと 言ふ夫を宥め 帰しやる 冷きわれと 醒めて思ふや
トモニシナムト イフツマヲナダメ カエシヤル ツメタキワレト サメテオモフヤ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05201
死ぬ時は ひとりで死ぬと 言ひ切りて こみあぐる涙 堪へむとしたり
シヌトキハ ヒトリデシヌト イヒキリテ コミアグルナミダ タヘムトシタリ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05202
ドラマの中の 女ならば如何にか 哭きたらむ 灯を消してわれの 眠らむとする
ドラマノナカノ オンナナラバイカニカ ナキタラム ヒヲケシテワレノ ネムラムトスル

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05203
ひとたびは 葛藤の中に 身を投じ 質さねばならぬ 理路とも思ふ
ヒトタビハ カットウノナカニ ミヲトウジ タダサネバナラヌ リロトモオモフ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05204
妻とふ名に 執するごとき 生き方も 苦しみてわが 超えねばならぬ
ツマトフナニ シュウスルゴトキ イキカタモ クルシミテワガ コエネバナラヌ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05205
いつまでも 待つと言ひしかば 鎮まりて 帰りゆきしか それより逢はず
イツマデモ マツトイヒシカバ シズマリテ カエリユキシカ ソレヨリアハズ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05206
一枚の 教員免許状が 今は終生の よりどと思ひ 涙こぼれつ
イチマイノ キョウインメンキョジョウガ イマハシュウセイノ ヨリドトオモヒ ナミダコボレツ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05207
さまざまの 見方されゐる われと知る 酔ひし友に今日は 貞女と呼ばる
サマザマノ ミカタサレヰル ワレトシル ヨヒシトモニキョウハ テイジョトヨバル

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05208
忽ちに 遁しし幸よ 用のなく なりしリキュール グラスを磨く
タチマチニ ノガシシサチヨ ヨウノナク ナリシリキュール グラスヲミガク

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05209
蚊遣りの匂ひ 残れる部屋に めざめゐつ 寂しき朝にも 馴れて久しき
カヤリノニオヒ ノコレルヘヤニ メザメヰツ サビシキアサニモ ナレテヒサシキ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8


05210
いつとなく 寂しき雰囲気 漂はす われならずやと思ふ 勤め終へ来て
イツトナク サビシキフンイキ タダヨハス ワレナラズヤトオモフ ツトメオヘキテ

『形成』(形成発行所 1955.12) 第3巻12号(通巻32号) p.8