さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

形成

 
算盤を         扇風機を        飯盒の         学問する程       
傷つけ合ふを      わが教へ子が      何もかも        なまなかの       
雨の音         諧調を         刹那々々に       アンダルシアの     
夢さめて        み手の線        
 
 
 

05164
算盤を おきゐたる小女 身軽に立ち来て 騰写終へしわれらに 茶をいれくるる
ソロバンヲ オキヰタルショウジョ ミガルニタチキテ トウシャオヘシワレラニ チャヲイレクルル

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05165
扇風機を 備へつけたれば 炊事婦君も この夏は幾らか 働きよからむ
センプウキヲ ソナヘツケタレバ スイジフクンモ コノナツハイクラカ ハタラキヨカラム

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05166
飯盒の 噴きたるを機に 宿直の 同僚の饒舌より のがれて帰る
ハンゴウノ フキタルヲシホニ シュクチョクノ トモノジョウゼツヨリ ノガレテカエル

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05167
学問する程 女は不幸に なるといふ 論に反撥しつつ 寂しくなりぬ
ガクモンスルホド オンナハフコウニ ナルトイフ ロンニハンパツシツツ サビシクナリヌ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05168
傷つけ合ふを 避けて帰らむ 孤独の 深みにて吐く かたみの言葉
キズツケアフヲ サケテカエラム コドクノ フカミニテハク カタミノコトバ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05169
わが教へ子が 夫の教へ子に 嫁ぐ知らせ 届きぬ夫の 帰らぬ家に
ワガオシヘゴガ ツマノオシヘゴニ トツグシラセ トドキヌツマノ カエラヌイエニ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05170
何もかも 見抜きていまさむ 元気を出せと 最後に言ひて 電話切り給ふ
ナニモカモ ミヌキテイマサム ゲンキヲダセト サイゴニイヒテ デンワキリタマフ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05171
なまなかの 批判には屈せず なりて来て 悲しみは不意に 内より湧き来
ナマナカノ ヒハンニハクッセズ ナリテキテ カナシミハフイニ ウチヨリワキク

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05172
雨の音 聴きつつ夜半を 目覚めゐて 濡れて光りゐむ 木膚を思ふ
アメノオト キキツツヨワヲ メザメヰテ ヌレテヒカリヰム キハダヲオモフ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05173
諧調を 求むるこころ 夜更けて ヴィオリンの絃 引き緊めてゆく
カイチヨウヲ モトムルココロ ヨルフケテ ヴィオリンノイト ヒキシメテユク

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05174
刹那々々に 生くる狂喜も わが知らず 流浪者の唄 弾きつつ寂し
セツナセツナニ イクルキョウキモ ワガシラズ チゴイネルワイゼン ヒキツツサビシ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05175
アンダルシアの 野とも岩手の 野とも知れず ジプシーは彷徨ひ ゆけりわが夢に
アンダルシアノ ノトモイワテノ ノトモシレズ ジプシーハサマヨヒ ユケリワガユメニ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05176
夢さめて 胸ははづめり 何に追はれて 駈けゐしかと闇に 目あきて思ふ
ユメサメテ ムネハハヅメリ ナンニオハレテ カケヰシカトヤミニ メアキテオモフ

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.5


05177
み手の線 美しとのみ見ゐし 月光像 いま仰ぎなば 涙あふれむ
ミテノセン ウツクシトノミミヰシ ガッコウゾウ イマアオギナバ ナミダアフレム

『形成』(形成発行所 1955.9) 第3巻9号(通巻29号) p.6