さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

形成

 
何か秘めおく      われの外        帰らざる        別れ住む        
散漫に         アンカットの      青年演劇        期末の仕事に      
校正刷りの       思ひまうけぬ      跪きて         
 
 
 

05095
何か秘めおく 如く鍵しめ 部屋を出づ 散り透きて明るき 朝の道なり
ナニカヒメオク ゴトクカギシメ ヘヤヲイヅ チリスキテアカルキ アサノミチナリ

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05096
われの外 開くる人なき 部屋の鍵 をりふしバッグの 底にて鳴れり
ワレノホカ アクルヒトナキ ヘヤノカギ ヲリフシバッグノ ソコニテナレリ

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05097
帰らざる 幾月ドアの 合鍵の 一つを今も君は 持ちゐるらむか
カエラザル イクツキドアノ アイカギノ ヒトツヲイマモキミハ モチヰルラムカ

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05098
別れ住む 間さへ苛まれ ゐる身よ 落葉に埋れて しまひたくなる
ワカレスム マサヘサイナマレ ヰルミヨ オチバニウモレテ シマヒタクナル

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05099
散漫に なる夜の心 まどろめば 聖アンネの像が まなうらに来る
サンマンニ ナルヨノココロ マドロメバ セイアンネノゾウガ マナウラニクル

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05100
アンカットの まま重ねおく 詩集一つ 徒労とも思ふわが 仕事ふえゆく
アンカットノ ママカサネオク シシュウヒトツ トロウトモオモフワガ シゴトフエユク

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05101
青年演劇 グループ公演の 取材終へ 帰り来て冷えし 飯を噛みしむ
セイネンエンゲキ グループコウエンノ シュザイオヘ カエリキテヒエシ イヒヲカミシム

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05102
期末の仕事に 誰も疲れて ゆく日々に 言葉やさしき われと思へり
キマツノシゴトニ タレモツカレテ ユクヒビニ コトバヤサシキ ワレトオモヘリ

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05103
校正刷りの 届くを待ちて 夜となりぬ 手伝はむといふ少女と 煉炭に寄る
コウセイズリノ トドクヲマチテ ヨトナリヌ テツダハムトイフショウジョト レンタンニヨル

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05104
思ひまうけぬ 憎悪の語聞き来し 今日の会 何の信号か遠き 視界に光る
オモヒマウケヌ ゾウオノゴキキコシ キョウノカイ ナンノシンゴウカトオキ シカイニヒカル

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60


05105
跪きて 砂漠に祈る ターバンの 群の一人たりしが 汗ばみてめざむ
ヒザマズキテ サバクニイノル ターバンノ ムレノヒトリタリシガ アセバミテメザム

『形成』(形成発行所 1955.3) 第3巻3号(通巻23号) p.60