さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

形成

 
農閑期狙ふ       開会を         新歴史観        「浅草文化」に     
文化は育たぬと     わが歎き        ハンカチ幾枚      水びたしの       
洋裁店に        独りゐの        出張要務        わが未来のみ      
 
 
 

05058
農閑期狙ふ 講座の日も迫り 人寄せに 写さむ幻燈の スライドを選る
ノウカンキネラフ コウザノヒモセマリ ヒトヨセニ ウツサムゲントウノ スライドヲエル

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05059
開会を 促す声係が 伝へ来れば こころ重く講師の 案内に立ちぬ
カイカイヲ ウナガスコエカカリガ ツタヘクレバ ココロオモクコウシノ アナイニタチヌ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05060
新歴史観 説き進む論調の 高まりに 惹きこまれつつ 速記続くる
シンレキシカン トキススムロンチョウノ タカマリニ ヒキコマレツツ ソッキツヅクル

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05061
「浅草文化」に なづみ易き土地の 条件を 歎く若き農夫の 声胸を打つ
アサクサブンカニ ナヅミヤスキトチノ ジョウケンヲ ナゲクワカキノウフノ コエムネヲウツ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05062
文化は育たぬと 言はれ来し地区に コーラスの 会生まれしを 告ぐるをとめあり
ブンカハソダタヌト イハレコシチクニ コーラスノ カイウマレシヲ ツグルヲトメアリ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05063
わが歎き 内攻するを母は 怖るるや 悲しき時は泣けと 言ひて帰りぬ
ワガナゲキ ナイコウスルヲハハハ オソルルヤ カナシキトキハナケト イヒテカエリヌ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05064
ハンカチ幾枚 ためて夜更けに 洗へるを 隣室の女 見て通りたり
ハンカチイクマイ タメテヨフケニ アラヘルヲ リンシツノオンナ ミテトオリタリ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05065
水びたしの 日本列島と思ひ 目覚めゐつ 夜の更けて又 降りつのる雨
ミズビタシノ ニホンレットウトオモヒ メザメヰツ ヨノフケテマタ フリツノルアメ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05066
洋裁店に 住みこめる教へ子の 今日の手紙 徒弟制度の暗き 雰囲気を伝ふ
ヨウサイテンニ スミコメルオシヘゴノ キョウノテガミ トテイセイドノクラキ フンイキヲツタフ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05067
独りゐの 身に相応ひゆくや 本棚の 裏にひそみて こほろぎの鳴く
ヒトリヰノ ミニフサヒユクヤ ホンダナノ ウラニヒソミテ コホロギノナク

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05068
出張要務 終へ来て村の 市に買ふ 冬越えて咲かむ花の 球根幾種
シュッチョウヨウム オヘテキテムラノ イチニカフ フユコエテサカムハナノ キュウコンイクシュ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7


05069
わが未来のみ 気遣ふ手紙くるる 母のため 帰り来て水仙の 球根を植う
ワガミライノミ キヅカフテガミクルル ハハノタメ カエリキテスイセンノ キュウコンヲウウ

『形成』(形成発行所 1954.12) 第2巻12号(通巻20号) p.7