さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

風の曼陀羅

 
夫とわれと       けものみちを      出土せる        すれすれに       
風立てば        園児らの        料亭の         家並みを        
停留所は        机より         何ほどの        駅前の         
多分夢と        歌に知る        冬服の         港まちの        
使ひふるしし      北を指し        クリークに       根の国に        
階段まで        
 
 
 

04597
夫とわれと 共に働く 生活の 七年にして 在る日終はりき
ツマトワレト トモニハタラク セイカツノ シチネンニシテ アルヒオハリキ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.186
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (1)


04598
けものみちを あらはに見せて 風が吹く ただ熊笹の 音のみのして
ケモノミチヲ アラハニミセテ カゼガフク タダクマザサノ オトノミノシテ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.186
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (2)


04599
出土せる 黄金の鐙 見むと言ひ 旅びとは今日も 駅に溢るる
シュツドセル ワウゴンノアブミ ミムトイヒ タビビトハキョウモ エキニアフルル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.187
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (3)


04600
すれすれに 地上を飛べる 子雀も 次第に角度を あげてゆくらむ
スレスレニ チジョウヲトベル コスズメモ シダイニカクドヲ アゲテユクラム

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.187
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (4)


04601
風立てば 幹ながら木を 傾けて 振り落とす如き 楓もみぢ葉
カゼタテバ ミキナガラキヲ カタムケテ フリオトスゴトキ カエデモミヂハ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.187
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (5)


04602
園児らの 三分の一ほど 残されて 踏切の手前 しばし賑はふ
エンジラノ サンブンノイチホド ノコサレテ フミキリノテマエ シバシニギハフ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.188
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (6)


04603
料亭の 建仁寺垣に 沿ひて来て 曇り日が似合ふ 町と思ひぬ
リョウテイノ ケンニンジガキニ ソヒテキテ クモリビガニアフ マチトオモヒヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.188
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (7)


04604
家並みを 貫きて通る ハイウエイの 高さに桐は 実を掲げゐつ
イエナミヲ ツラヌキテトオル ハイウエイノ タカサニキリハ ミヲカカゲヰツ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.188
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (8)


04605
停留所は 落ち葉日溜まり 癒えてまた 立つ日のありと 思はざりけり
テイリュウジョハ オチバヒダマリ イエテマタ タツヒノアリト オモハザリケリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.189
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (9)


04606
机より 咄嗟に立ちて 来し厨 白粥の湯気に 眼鏡くもらす
ツクエヨリ トツサニタチテ コシクリヤ シラカユノユゲニ メガネクモラス

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.189
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (10)


04607
何ほどの 予知能力を 持つ鳥か 病みゐて鴉を 怖れし日あり
ナニホドノ ヨチノウリョクヲ モツトリカ ヤミヰテカラスヲ オソレシヒアリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.189
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (11)


04608
駅前の 大小のビルが 浮かびたり 「街」といふ字を 見詰めてあれば
エキマエノ ダイショウノビルガ ウカビタリ マチトイフジヲ ミツメテアレバ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.190
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (12)


04609
多分夢と 思ひつつなほ 走りたり 逃げても逃げても つかまりさうで
タブンユメト オモヒツツナホ ハシリタリ ニゲテモニゲテモ ツカマリサウデ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.190
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (13)


04610
歌に知る 消息にして 仙台の アカンサスは今年 咲かざりしとぞ
ウタニシル ショウソクニシテ センダイノ アカンサスハコトシ サカザリシトゾ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.190
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (14)


04611
冬服の ベストを着たる 少女たち セーラー服は 少なくなりぬ
フユフクノ ベストヲキタル ショウジョタチ セーラーフクハ スクナクナリヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.191
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (15)


04612
港まちの 教師をしをれば 鯨長者の 娘もゐたりき わが教室に
ミナトマチノ キョウシヲシヲレバ クジラチョウジャノ ムスメモヰタリキ ワガキョウシツニ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.191
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (16)


04613
使ひふるしし 物ばかりなる 身のほとり メジャーはすぐに 捩れてしまふ
ツカヒフルシシ モノバカリナル ミノホトリ メジャーハスグニ ネジレテシマフ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.191
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (17)


04614
北を指し 飛ぶ一番機 敵機かと 目ざめて今も 思ふことあり
キタヲサシ トブイチバンキ テキキカト メザメテイマモ オモフコトアリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.192
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (18)


04615
クリークに 落ちてかへらぬ 兵ありき 同級の一人 なれば忘れず
クリークニ オチテカヘラヌ ヘイアリキ ドウキュウノヒトリ ナレバワスレズ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.192
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (19)


04616
根の国に みんな盗られて この年も ただ雪を待つ のみとなりたり
ネノクニニ ミンナトラレテ コノトシモ タダユキヲマツ ノミトナリタリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.192
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (20)


04617
階段まで 灯をともし 待ちをれば ひとりぐらゐは 戻りて来ずや
カイダンマデ アカリヲトモシ マチヲレバ ヒトリグラヰハ モドリテコズヤ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.193
【初出】 『短歌往来』 1991.1 ひとりぐらゐは (21)