さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

風の曼陀羅

 
ヘッドライトに     屋上の         みづからの       病みがちに       
竹似草         廃線の         散らばれる       発掘の         
稲藁を         こだまにも       梅園を         堪へ切れず       
雪どけに        県境の         瓶の形を        日だまりの       
種を採る        学用品の        犬を曳く        膝つきて        
 
 
 

04278
ヘッドライトに 照らし出さるる 夜の坂 往きに見ざりし 木が立ちあがる
ヘッドライトニ テラシダサルル ヨルノサカ ユキニミザリシ キガタチアガル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.55
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (1)


04279
屋上の 灯のともりゐる ところまで 昇りつめたる 目をひき戻す
オクジョウノ ヒノトモリヰル トコロマデ ノボリツメタル メヲヒキモドス

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.55
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (2)


04280
みづからの 肩に清めの 塩を振る いまだ生なる 身を帰り来て
ミヅカラノ カタニキヨメノ シオヲフル イマダナマナル ミヲカエリキテ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.56
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (3)


04281
病みがちに 指美しき 人なりき その指を組みて 旅立ちましぬ
ヤミガチニ ユビウツクシキ ヒトナリキ ソノユビヲクミテ タビタチマシヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.56
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (4)


04282
竹似草 刈られて広き 川提 胸のあばらも 透くごとき日よ
タケニグサ カラレテヒロキ カワヅツミ ムネノアバラモ スクゴトキヒヨ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.56
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (5)


04283
廃線の レールのほとり 散りそむる あり咲き出づる ありて白梅
ハイセンノ レールノホトリ チリソムル アリサキイヅル アリテシラウメ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.57
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (6)


04284
散らばれる 親馬仔馬 子供らの ゑがく仔馬は いたく小さし
チラバレル オヤウマコウマ コドモラノ ヱガクコウマハ イタクチイサシ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.57
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (7)


04285
発掘の あとをそのまま 霜枯れて 風に打たるる 目じるしの旗
ハックツノ アトヲソノママ シモカレテ カゼニウタルル メジルシノハタ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.57
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (8)


04286
稲藁を 焚きゐる塚は ひとしきり のろしの如き 煙あげたり
イナワラヲ タキヰルツカハ ヒトシキリ ノロシノゴトキ ケムリアゲタリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.58
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (9)


04287
こだまにも 遅速のありて はるかなる 雑木の山も 芽ぐまむころか
コダマニモ チソクノアリテ ハルカナル ゾウキノヤマモ メグマムコロカ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.58
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (10)


04288
梅園を くぐりて来れば 絵馬堂の 絵馬は木の音 立てて吹かるる
バイエンヲ クグリテクレバ エマドウノ エマハキノオト タテテフカルル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.58
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (11)


04289
堪へ切れず 垂るると如く 中天を 撓めてゆけり 航跡雲は
タヘキレズ タルルトゴトク チュウテンヲ タワメテユケリ コウセキウンハ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.59
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (12)


04290
雪どけに 濁れるを見て 去らむとす 澄みゆくまでの 時間も知らず
ユキドケニ ニゴレルヲミテ サラムトス スミユクマデノ ジカンモシラズ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.59
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (13)


04291
県境の 村はたちまち 暮れゆきて 夜に見る梅は つぶつぶの白
ケンザカヒノ ムラハタチマチ クレユキテ ヨニミルウメハ ツブツブノシロ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.59
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (14)


04292
瓶の形を そのまま包める 持ちものを 横にして膝に 置けり少女は
ビンノカタチヲ ソノママクルメル モチモノヲ ヨコニシテヒザニ オケリショウジョハ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.60
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (15)


04293
日だまりの 斑雪を掻きて ゐたりしが 首立てて鳴く 牝鶏一羽
ヒダマリノ ハダレヲカキテ ヰタリシガ クビタテテナク メンドリイチワ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.60
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (16)


04294
種を採る 菜のみひと畝 残されて 匂ふばかりの 黒土となる
タネヲトル ナノミヒトウネ ノコサレテ ニオフバカリノ クロツチトナル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.60
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (17)


04295
学用品の 広告が今朝も 配られぬ 太郎も次郎も あらぬわが家に
ガクヨウヒンノ コウコクガケサモ クバラレヌ タロウモジロウモ アラヌワガヤニ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.61
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (18)


04296
犬を曳く 少年が行き 夕刊の 薄きが届き 冬の日暮れぬ
イヌヲヒク ショウネンガユキ ユウカンノ ウスキガトドキ フユノヒクレヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.61
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (19)


04297
膝つきて ボタンつけをれば いつの日の 夕べにか似て 雨の音する
ヒザツキテ ボタンツケヲレバ イツノヒノ ユウベニカニテ アメノオトスル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.61
【初出】 『歌壇』 1987.5 雨の音する (20)