さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

風の曼陀羅

 
バス停の        オルゴールを      うす紙を        つばくろの       
角砂糖を        をりをりに       ひとりゐは       竹籠の         
紋織りの        今もなほ        値の高き        ずたずたに       
吹きしまく       どのやうに       手すさびに       行きどまりの      
むじな偏の       硝煙の         大いなる        幾たびも        
山ありて        バスを待つ       失くし来し       透かし見て       
 
 
 

04177
バス停の 標識白く 点るころ ラマ僧二人 いづこへ帰る
バステイノ ヒョウシキシロク トモルコロ ラマソウフタリ イヅコヘカエル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.13
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (25)


04178
オルゴールを 閉づれば戻る しじまあり よはひは既に 乱を好まず
オルゴールヲ トヅレバモドル シジマアリ ヨハヒハスデニ ランヲコノマズ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.13


04179
うす紙を はさみて椀を 積みをれば 禁忌事項の 数あるごとし
ウスガミヲ ハサミテワンヲ ツミヲレバ キンキジコウノ カズアルゴトシ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.14
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (1)


04180
つばくろの 低く飛ぶ日は 雨と言ひ 母もさびしく 留守を守りけむ
ツバクロノ ヒククトブヒハ アメトイヒ ハハモサビシク ルスヲマモリケム

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.14
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (3)


04181
角砂糖を 詰めむとするに かどばりて 空間寒し ガラスの壺は
カクザトウヲ ツメムトスルニ カドバリテ クウカンサムシ ガラスノツボハ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.14
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (4)


04182
をりをりに 行くわが意識 冷蔵庫に 大きザボンを 一つ持てれば
ヲリヲリニ ユクワガイシキ レイゾウコニ オオキザボンヲ ヒトツモテレバ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.15
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (7)


04183
ひとりゐは めぐり冷えゐる 日の多し 絵巻の雲の 不意にひろがる
ヒトリヰハ メグリヒエヰル ヒノオオシ エマキノクモノ フイニヒロガル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.15
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (8)


04184
竹籠の 網のまばらを はみ出でて 生椎茸は 茸の匂ひ
タケカゴノ アミノマバラヲ ハミイデテ ナマシイタケハ キノコノニオヒ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.15
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (5)


04185
紋織りの 薔薇の模様は かすかなる 翳なして白の テーブルクロス
モンオリノ バラノモヨウハ カスカナル カゲナシテシロノ テーブルクロス

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.16
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (9)


04186
今もなほ 俗名に呼びて 語り合ふ 逝きて六年 たちたる人を
イマモナホ ゾクミョウニヨビテ カタリアフ ユキテロクネン タチタルヒトヲ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.16
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (10)


04187
値の高き 古書の噂を して行けり 人それぞれの よろこびを持つ
ネノタカキ コショノウワサヲ シテユケリ ヒトソレゾレノ ヨロコビヲモツ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.16
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (11)


04188
ずたずたに なる思ひせり 天幕の 切れめに風の ふためく見居て
ズタズタニ ナルオモヒセリ テンマクノ キレメニカゼノ フタメクミイテ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.17
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (12)


04189
吹きしまく 砂塵にまなこ 閉ぢをれば めくれてゆけり 野原一枚
フキシマク サジンニマナコ トヂヲレバ メクレテユケリ ノハライチマイ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.17
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (13)


04190
どのやうに 立つ牛ならむ 立つときを 忘れしさまに 反芻みやまず
ドノヤウニ タツウシナラム タツトキヲ ワスレシサマニ ニレカミヤマズ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.17
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (14)


04191
手すさびに 拾ひたれども 石は石の 重さに土の 匂ひをまとふ
テスサビニ ヒロヒタレドモ イシハイシノ オモサニツチノ ニオヒヲマトフ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.18
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (15)


04192
行きどまりの 垣にからみて 鉄線の 大き紫 かがよひゐたり
ユキドマリノ カキニカラミテ テツセンノ オオキムラサキ カガヨヒヰタリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.18
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (16)


04193
むじな偏の 貌といふ字を 書きをれば 人間といふ 不可解のもの
ムジナヘンノ カオトイフジヲ カキヲレバ ニンゲントイフ フカカイノモノ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.18
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (18)


04194
硝煙の 臭ひといふを 手花火に 嗅ぎつつ子らは 怖れを知らず
ショウエンノ ニオヒトイフヲ テハナビニ カギツツコラハ オソレヲシラズ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.19
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (17)


04195
大いなる スパナの形と 気づきたり 何を恐れて 見し夢ならむ
オオイナル スパナノカタチト キヅキタリ ナニヲオソレテ ミシユメナラム

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.19
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (19)


04196
幾たびも かけかへられし 大橋に 人柱とふ 言葉も古りぬ
イクタビモ カケカヘラレシ オオハシニ ヒトバシラトフ コトバモフリヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.19
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (22)


04197
山ありて 谷ありて人は 生くるとふ いま目の前は 桜のふぶき
ヤマアリテ タニアリテヒトハ イクルトフ イマメノマエハ サクラノフブキ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.20
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (21)


04198
バスを待つ 列に喪服の 人のをり 糸引きて雨は 菜の花に降る
バスヲマツ レツニモフクノ ヒトノヲリ イトヒキテアメハ ナノハナニフル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.20
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (23)


04199
失くし来し ライター思へば 窓口の 孔雀羊歯の鉢も 目によみがへる
ナクシコシ ライターオモヘバ マドグチノ クジャクシダノハチモ メニヨミガヘル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.20
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (24)


04200
透かし見て 手漉きの和紙を 買ひたれば まだらを胸に いだく心地す
スカシミテ テスキノワシヲ カヒタレバ マダラヲムネニ イダクココロチス

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.21
【初出】 『短歌現代』 1987.8 絵巻の雲 (20)