さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

印度の果実

 
くれがたに       すれすれに       色づける        思はれて        
うるし塗りの      蓋を取れば       螢ぶくろの       灯の暗き        
休みかと        雨ながら        この道を        雨の夜は        
煮えくり返る      砂利は砂利の      学びてより       五百枚の        
 
 
 

04161
くれがたに 群れとぶ見れば グレナダへ 僧になりにゆく 鴉ならずや
クレガタニ ムレトブミレバ グレナダヘ ソウニナリニユク カラスナラズヤ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.149
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (1)


04162
すれすれに バスをよけたる 草の道 毒の茸も このごろは見ず
スレスレニ バスヲヨケタル クサノミチ ドクノキノコモ コノゴロハミズ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.149
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (2)


04163
色づける 羽状複葉 何の木と 仰ぎゐし間に 音を失ふ
イロヅケル ウジョウフクヨウ ナンノキト アオギヰシマニ オトヲウシナフ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.150
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (3)


04164
思はれて ゐるやうにしか 振舞へず なまの感情は をりをりきざす
オモハレテ ヰルヤウニシカ フルマヘズ ナマノカンジョウハ ヲリヲリキザス

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.150
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (5)


04165
うるし塗りの 細き筆など ありにしが 身のほとりより さまざまに失す
ウルシヌリノ ホソキフデナド アリニシガ ミノホトリヨリ サマザマニウス

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.151
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (6)


04166
蓋を取れば 裏の光りたり 蓋を取ると いふことを日に 幾たびもする
フタヲトレバ ウラノヒカリタリ フタヲトルト イフコトヲヒニ イクタビモスル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.151
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (7)


04167
螢ぶくろの 花ほうと吹き 生けむとす 若かりし母の なしし如くに
ホタルブクロノ ハナホウトフキ イケムトス ワカカリシハハノ ナシシゴトクニ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.152
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (8)


04168
灯の暗き 寄宿舎の冬 伏せ字解くを たのしみとしたる 少女期ありき
ヒノクラキ キシュクシャノフユ フセジトクヲ タノシミトシタル ショウジョキアリキ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.152
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (9)


04169
休みかと 問はれてうなづき 店を出づ いづれ知られむ 職をひきしことも
ヤスミカト トハレテウナヅキ ミセヲイヅ イヅレシラレム ショクヲヒキシコトモ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.153
【初出】 『短歌研究』 1984.1 雨の記憶 (3)


04170
雨ながら かすかに虹の 浮く空と 知りて歩みの あかるむ如し
アメナガラ カスカニニジノ ウクソラト シリテアユミノ アカルムゴトシ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.153
【初出】 『短歌研究』 1984.1 雨の記憶 (4)


04171
この道を ゆくほかはなく カーブミラーの 映す枯れ野に 近づきて行く
コノミチヲ ユクホカハナク カーブミラーノ ウツスカレノニ チカヅキテユク

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.154
【初出】 『短歌研究』 1984.1 雨の記憶 (5)


04172
雨の夜は 眠れぬわれと あきらむる 雨の記憶は おほよそ暗し
アメノヨハ ネムレヌワレト アキラムル アメノキオクハ オホヨソクラシ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.154
【初出】 『短歌研究』 1984.1 雨の記憶 (6)


04173
煮えくり返る 思ひなりしが 一夜明けて たひらぎてゐる われに愕く
ニエクリカエル オモヒナリシガ イチヤアケテ タヒラギテヰル ワレニオドロク

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.155
【初出】 『短歌研究』 1984.1 雨の記憶 (7)


04174
砂利は砂利の 音たてて道に おろされぬ 土まみれの石 幾つころがる
ジャリハジャリノ オトタテテミチニ オロサレヌ ツチマミレノイシ イクツコロガル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.155
【初出】 『短歌研究』 1984.1 雨の記憶 (2)


04175
学びてより はや五十年は たちながら 農本主義と いふを忘れず
マナビテヨリ ハヤゴジュウネンハ タチナガラ ノウホンシュギト イフヲワスレズ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.156
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (10)


04176
五百枚の 原稿用紙 買ひ持ちて いまだ紙なる 重さを運ぶ
ゴヒャクマイノ ゲンコウヨウシ カヒモチテ イマダカミナル オモサヲハコブ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.156
【初出】 『短歌現代』 1984.1 をりをりきざす (4)