さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

印度の果実

 
竜胆の         過ぎてゆく       色の無き        遠くまで        
雪の日の        壁の絵の        棒立ちに        ランタンを       
真人間と        かなしみて       帰りゆく        在り馴れし       
 
 
 

04142
竜胆の 花を生けをれば 先の世も 後の世もひとり 棲むかと思ふ
リンダウノ ハナヲイケヲレバ サキノヨモ ノチノヨモヒトリ スムカトオモフ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.138
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (1)


04143
過ぎてゆく 足音ばかり 音あらく 氷を踏むは 下校の子らか
スギテユク アシオトバカリ オトアラク コオリヲフムハ ゲコウノコラカ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.139
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (2)


04144
色の無き 葡萄摘みゐる 夢なりき 色無き房は 手に重かりき
イロノナキ ブドウツミヰル ユメナリキ イロナキフサハ テニオモカリキ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.139
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (3)


04145
遠くまで ものの見ゆる日 見えざる日 視界くらめて 今朝は雪降る
トオクマデ モノノミユルヒ ミエザルヒ シカイクラメテ ケサハユキフル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.140
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (4)


04146
雪の日の 逆光のなか おのづから 胸に手を当つ マリアの像は
ユキノヒノ ギャクコウノナカ オノヅカラ ムネニテヲアツ マリアノゾウハ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.140
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (5)


04147
壁の絵の 思はぬ隅に 眼あり 見られてあらむ 幾つもの目に
カベノエノ オモハヌスミニ マナコアリ ミラレテアラム イクツモノメニ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.141
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (6)


04148
棒立ちに なりし白馬を ゑがきたり 馬の恐怖の よみがへるまで
ボウダチニ ナリシハクバヲ ヱガキタリ ウマノキョウフノ ヨミガヘルマデ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.141
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (7)


04149
ランタンを 突き出して何を 見たりしや 絵のなかの女は ただにみひらく
ランタンヲ ツキダシテナニヲ ミタリシヤ エノナカノオンナハ タダニミヒラク

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.142
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (8)


04150
真人間と いふ言葉不意に 湧きて出づ 自画像に光る 眼見をれば
マニンゲント イフコトバフイニ ワキテイヅ ジガゾウニヒカル マナコミヲレバ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.142
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (9)


04151
かなしみて 人は過ぎゆき 足もとに ゑがかれし赤き 花のみそよぐ
カナシミテ ヒトハスギユキ アシモトニ ヱガカレシアカキ ハナノミソヨグ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.143
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (11)


04152
帰りゆく 一人となりて 立つバスに たれかかすかに ポプリ匂はす
カエリユク ヒトリトナリテ タツバスニ タレカカスカニ ポプリニオハス

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.143
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (12)


04153
在り馴れし ひとりの夕餉 卓上の 塩と胡椒を かそかに振りて
アリナレシ ヒトリノユウゲ タクジョウノ シオトコショウヲ カソカニフリテ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.144
【初出】 『短歌』 1985.2 壁の絵 (14)