さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

印度の果実

 
残さるる        地上にて        人のともす       うつむきて       
敗れたる        旧道の         そよがぬ木       洋館は         
語部も         石像の         終りまで        殺気のごとき      
卓上の         何事も         
 
 
 

04108
残さるる ことも幾たび 夕立に 袖濡らし来し 喪服を吊るす
ノコサルル コトモイクタビ ユウダチニ ソデヌラシコシ モフクヲツルス

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.118
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (1)


04109
地上にて いまだなすべき ことあらむ 戻り来りし 思ひに坐る
チジョウニテ イマダナスベキ コトアラム モドリキタリシ オモヒニスワル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.119
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (2)


04110
人のともす 星にかあらむ 急速に 灯を殖やしゆく 丘の団地は
ヒトノトモス ホシニカアラム キュウソクニ ヒヲフヤシユク オカノダンチハ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.119
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (3)


04111
うつむきて 印度の果実 むきをれば やいばはつねに わが胸に向く
ウツムキテ インドノカジツ ムキヲレバ ヤイバハツネニ ワガムネニムク

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.120
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (5)


04112
敗れたる 牛は如何にか 映像は 勝てる牡牛を しばらく見しむ
ヤブレタル ウシハイカニカ エイゾウハ カテルオウシヲ シバラクミシム

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.120
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (4)


04113
旧道の ほとりの草に 風騒ぎ 雷の音の 遠く聞こゆる
キュウドウノ ホトリノクサニ カゼサワギ カミナリノオトノ トオクキコユル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.121
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (6)


04114
そよがぬ木 そよぐ木あまた 茂るなか 夾竹桃は 紅くかたまる
ソヨガヌキ ソヨグキアマタ シゲルナカ キョウチクトウハ アカクカタマル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.121
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (7)


04115
洋館は 林の奥に 建ちゐしが コリー犬など いかになりけむ
ヨウカンハ ハヤシノオクニ タチヰシガ コリーケンナド イカニナリケム

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.122
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (8)


04116
語部も 占部も遠く 去りし世に 鞠を抱けり 石の狐は
カタリベモ ウラベモトオク サリシヨニ マリヲイダケリ イシノキツネハ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.122
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (9)


04117
石像の いだける琵琶の 鳴り出づる 夜もありにけむ 風のまにまに
セキゾウノ イダケルビワノ ナリイヅル ヨモアリニケム カゼノマニマニ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.123
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (10)


04118
終りまで 聞きてよりものを 言ふ習ひ ながき勤めに 培ひて来し
オワリマデ キキテヨリモノヲ イフナラヒ ナガキツトメニ ツチカヒテコシ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.123
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (11)


04119
殺気のごとき ひとすぢ走り すぎしのみ すぐコーヒーは 運ばれて来ぬ
サッキノゴトキ ヒトスヂハシリ スギシノミ スグコーヒーハ ハコバレテキヌ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.124
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (12)


04120
卓上の 駱駝のランプ 人の来て 背中に赤き 灯をともしたり
タクジョウノ ラクダノランプ ヒトノキテ セナカニアカキ ヒヲトモシタリ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.124
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (13)


04121
何事も なかりし如し 球体の 感じもあらで 残月うかぶ
ナニゴトモ ナカリシゴトシ キュウタイノ カンジモアラデ ザンゲツウカブ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.125
【初出】 『短歌新聞』 1983.8 印度の果実 (14)