さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

印度の果実

 
吊り橋の        降り出でし       どの海を        不発弾の        
街路樹の        切開の         綿虫の         
 
 
 

04030
吊り橋の 下をうかがへば 澄む水に 秘密めきたり 魚のうごきは
ツリバシノ シタヲウカガヘバ スムミズニ ヒミツメキタリ ウオノウゴキハ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.75


04031
降り出でし 雨にそのまま 別れ来て 憶測ばかり 胸にひろがる
フリイデシ アメニソノママ ワカレキテ オクソクバカリ ムネニヒロガル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.76


04032
どの海を 越えゆきにけむ 養蜂の 旅をそのまま 帰らずといふ
ドノウミヲ コエユキニケム ヨウホウノ タビヲソノママ カエラズトイフ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.76


04033
不発弾の 処理の終はれる 野の上に 洋凧をあげて 子らは遊べり
フハツダンノ ショリノオハレル ノノウエニ カイトヲアゲテ コラハアソベリ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.77


04034
街路樹の プラタナスの木 それぞれに 過去形のごとき 影あはく置く
ガイロジュノ プラタナスノキ ソレゾレニ カコケイノゴトキ カゲアハクオク

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.77


04035
切開の 痕のをりふし 引き吊るは 魂に持つ 傷のごとしも
セッカイノ アトノヲリフシ ヒキツルハ タマシヒニモツ キズノゴトシモ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.78
【初出】 『短歌研究』 1982.3 春寒のころ (1)


04036
綿虫の 芯ほのじろく 宙に浮き 消え入るやうに 沈みてゆけり
ワタムシノ シンホノジロク チュウニウキ キエイルヤウニ シズミテユケリ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.78
【初出】 『短歌研究』 1982.3 春寒のころ (2)