さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

風水

 
すきとほる       敵無くて        屋上に         シャッターの      
責められて       なしがたき       知らぬまに       わが顔も        
人数の         力学の         なさざりし       起き出でて       
けはひなく       仏頭の         水のほとりに      救はれし        
堪へがたき       石などを        寝返ると        方角の         
一本の         
 
 
 

03438
すきとほる ガラス見をれば 裏と表に 分れしのちの 遠き月日よ
スキトホル ガラスミヲレバ ウラトオモテニ ワカレシノチノ トオキツキヒヨ

『風水』(沖積舎 1986) p.65
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (1)


03439
敵無くて 味方のあらむ 筈なけれ 再びかかる きれぎれの虹
テキナクテ ミカタノアラム ハズナケレ フタタビカカル キレギレノニジ

『風水』(沖積舎 1986) p.66
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (2)


03440
屋上に のぼりて何を なす人か 三人をれば 心騒がず
オクジョウニ ノボリテナニヲ ナスヒトカ サンニンヲレバ ココロサワガズ

『風水』(沖積舎 1986) p.66
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (3)


03441
シャッターの あがる前より われの目に さだかに見えて ゐたる壺あり
シャッターノ アガルマエヨリ ワレノメニ サダカニミエテ ヰタルツボアリ

『風水』(沖積舎 1986) p.66
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (4)


03442
責められて 正すべき身に 何あらむ 首の無い絵に 人の集まる
セメラレテ タダスベキミニ ナニアラム クビノナイエニ ヒトノアツマル

『風水』(沖積舎 1986) p.67
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (5)


03443
なしがたき 旅を思へば ゆるやかに くだる煉瓦の 道など見え来
ナシガタキ タビヲオモヘバ ユルヤカニ クダルレンガノ ミチナドミエク

『風水』(沖積舎 1986) p.67
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (6)


03444
知らぬまに 免れ得たる 罪あらむ 棄つべき子さへ 持たざりしかば
シラヌマニ マヌガレエタル ツミアラム スツベキコサヘ モタザリシカバ

『風水』(沖積舎 1986) p.67
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (7)


03445
わが顔も 仮面の一つ 能面の 部屋を思へば うす明りせる
ワガカオモ カメンノヒトツ ノウメンノ ヘヤヲオモヘバ ウスアカリセル

『風水』(沖積舎 1986) p.68
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (8)


03446
人数の 減りて夜勤に 入らむとし 書庫の暗さの 気になりはじむ
ニンズウノ ヘリテヤキンニ イラムトシ ショコノクラサノ キニナリハジム

『風水』(沖積舎 1986) p.68
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (9)


03447
力学の 当然として 倒れたる 書架といへども また引き起こす
リキガクノ トウゼントシテ タオレタル ショカトイヘドモ マタヒキオコス

『風水』(沖積舎 1986) p.68
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (10)


03448
なさざりし 見ざりし咎は 深からむ なしたる罪の 多く問はるる
ナサザリシ ミザリシトガハ フカカラム ナシタルツミノ オオクトハルル

『風水』(沖積舎 1986) p.69
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (11)


03449
起き出でて 一時間がほどの たゆたひに ゆだぬることも 休みの日ゆゑ
オキイデテ イチジカンガホドノ タユタヒニ ユダヌルコトモ ヤスミノヒユヱ

『風水』(沖積舎 1986) p.69
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (12)


03450
けはひなく 咲く水中花 着色の 黄いろのままの はなびらを解く
ケハヒナク サクスイチュウカ チャクショクノ キイロノママノ ハナビラヲトク

『風水』(沖積舎 1986) p.69
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (13)


03451
仏頭の 眉さながらに 描きつつ 内なる修羅の うとましき日よ
ブットウノ マユサナガラニ エガキツツ ウチナルシュラノ ウトマシキヒヨ

『風水』(沖積舎 1986) p.70
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (14)


03452
水のほとりに 出づる理由など 明かされて 狐火もいつか 見られずなりぬ
ミズノホトリニ イヅルワケナド アカサレテ キツネビモイツカ ミラレズナリヌ

『風水』(沖積舎 1986) p.70
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (15)


03453
救はれし ことを負ひめに ながらへて 瀬音は耳を 離れずといふ
スクハレシ コトヲオヒメニ ナガラヘテ セオトハミミヲ ハナレズトイフ

『風水』(沖積舎 1986) p.70
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (16)


03454
堪へがたき 思ひなりしが 手袋を はめて凶器を 持つにもあらず
タヘガタキ オモヒナリシガ テブクロヲ ハメテキョウキヲ モツニモアラズ

『風水』(沖積舎 1986) p.71
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (17)


03455
石などを 落とすごとくに 思ひきり 突き落としたき 願ひと言はむ
イシナドヲ オトスゴトクニ オモヒキリ ツキオトシタキ ネガヒトイハム

『風水』(沖積舎 1986) p.71
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (18)


03456
寝返ると いふことのあり 寝返らば 別の世界の 見え来るらむか
ネカエルト イフコトノアリ ネカエラバ ベツノセカイノ ミエクルラムカ

『風水』(沖積舎 1986) p.71
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (19)


03457
方角の なき闇のなか 昼間見し 白梅ならむ 花明りする
ホウガクノ ナキヤミノナカ ヒルマミシ シラウメナラム ハナアカリスル

『風水』(沖積舎 1986) p.72
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (20)


03458
一本の 木となりてあれ ゆさぶりて 過ぎにしものを 風と呼ぶべく
イッポンノ キトナリテアレ ユサブリテ スギニシモノヲ カゼトヨブベク

『風水』(沖積舎 1986) p.72
【初出】 『短歌』 1979.5 首のない絵 (21)